研究課題/領域番号 |
06044176
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 共同研究 |
研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
野村 一也 九州大学, 理学部, 助教授 (30150395)
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研究分担者 |
KAI Simons EMBL分子生物学研究所(ドイツ), 細胞生物学部門, 教授
JOHN Gerhart カリフォルニイア大学(米国), バークレー分校細胞分子生物学部門, 教授
景浦 宏 福岡大学, 理学部, 助教授 (70194694)
SIMONS Kai European Molecular Biology Laboratory, Heidelberg, (Germany) Professor
GERHART John Dept.Mol.Cell Biol., Univ.California at Berkeley, (U.S.A.) Professor
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研究期間 (年度) |
1994
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研究課題ステータス |
完了 (1994年度)
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配分額 *注記 |
3,500千円 (直接経費: 3,500千円)
1994年度: 3,500千円 (直接経費: 3,500千円)
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キーワード | アフリカツメガエル / XBカドヘリン / アンチセンスノックアウト / ヒト血液型物質 / B型血液型物質 / 糖脂質 / 糖蛋白質 / 細胞接着分子 |
研究概要 |
私達はアフリカツメガエルの形態形成と文化に細胞接着分子がどの様に関わっているかを研究してきた。アフリカツメガエルにカルシュウム依存性細胞接着メカニズムが存在しそれが哺乳類で同定されていたカドヘリンによる接着メカニズムと相同である事をあきらかにしカドヘリン系のツメガエルでの研究の口火をきった。この研究を契機として私たちのものを含めて世界中の研究室でツメガエルのカドヘリンの研究が開始され、脊椎動物の初期発生におけるカドヘリンの役割を明らかにできる絶好のシステムとして現在も盛んに研究が行われている。 最近私達は、アフリカツメガエルの初期胚のカルシュウム依存性細胞接着がカドヘリンに対する抗体ではなく、実に意外な事にヒトの血液型B型物質に対する抗体で完全に阻害される事を見出した。この阻害は抗体のFabフラグメントでも起こり、また精製されたB型物質の添加でも生ずるので、単なる抗体の結合による立体障害によるものでは無い事が判明した。また調べてみると、確かにツメガエルの初期胚にはB型血液型物質を含む糖蛋白質と糖脂質が存在しており後者についてはその完全構造決定に成功した。免疫組織学的手法で調べてみると、B型血液型物質は細胞膜表面の細胞接着部位に存在しておりその細胞接着への積極的関与が窺われる結果を得た。おそらくヒトB型血液型物質はカドヘリンと直接に相互作用してその機能を膜上で調節したり、その膜上への輸送の調節に関与しているものと予想される。 膜上への輸送の調節に関する世界的権威であるドイツEMBLのKai Simons教授の参加をえて、私たちの構造解析に成功したヒトB型糖鎖含有糖脂質のカドヘリン膜輸送への関与の研究を開始した。現在までに残念ながら肯定的な結果は得られていないが、この研究の途中で、ヒト血液型B型糖鎖がECFリセプター上に存在している可能性を強く示唆する実験事実を得た。最近EGFリセプターがカドヘリン・カテニン複合体と相互作用してカテニンをリン酸化する可能性が指摘されており、この結果はB型糖鎖の細胞接着における機能の解明を大きく前進させるものと期待している。またアメリカのJ.Thomsen教授(ニューヨーク州立大学・ストーニ-・ブルック分校)のグループからはこの糖鎖がBMPリセプターの上に存在している可能性の指摘をいただき共同研究を続ける事になっている。B型糖鎖がひろくリセプターの機能調節にかかわりツメガエルの形態形成と分化の誘導に関与している可能性が高い。さらに私たちは熊本大学理学部の但馬達哉助手との共同研究で、ツメガエルのXBカドヘリンの遺伝子をクローニングすることに成功した。この遺伝子をトランスフェクトしたL細胞を使って、XBカドヘリン蛋白質にたいするモノクローナル抗体を作成、胞胚の初期胚細胞の細胞接着を阻害する抗体を得た。この抗体を使って二重免疫染色で調べた結果、、初期胚の膜上でB型血液型糖鎖とカドヘリンは緊密に相互作用していることが判明し、上のモデルを強く支持することが分かった。現在このカドヘリンをドミナントネガティブ法でノックアウトする実験を行っており、胞胚腔形成の異常が観察されている。アンチセンスオリゴヌクレオチドの注射によるカドヘリン遺伝子産物のノックアウト実験についても効率を上昇させる有効な改良法が完成し、また有効なin situのハイブリダイゼイションの方法を本研究の共同研究者から教えていただいたので、これを利用しながら現在最終的確証実験を継続中である。また、細胞接着分子を含めた遺伝子産物一般の機能を探る上で有効であるが現在までカエルでは全く不可能であった技術にトランスジェニック・カエルの作成がある。共同研究者のGerhart教授らは昨年初めてその作成を報告したが、その後大幅な改良を加え完全に実用レベルの技法に仕上げていることが分かった。今後今回の共同研究の延長としてこの手法をとりいれるとともに日本に広く紹介し、脊椎動物の発生の研究の画期的システムとしてのツメガエル研究を推進していきたいと考えている。
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