研究課題/領域番号 |
06044181
|
研究種目 |
国際学術研究
|
配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 共同研究 |
研究機関 | 九州工業大学 |
研究代表者 |
安井 湘三 九州工業大学, 情報工学部, 教授 (50132741)
|
研究分担者 |
山田 雅弘 電子技術総合研究所, 超分子部, 教授 汞任研究員
STELL W.K. カルガリー大学, 医学部・解剖学科, 教授
DJAMGOZ M.B. ロンドン大学, インペリアルカレッジ・生物学科, 教授
八木 哲也 九州工業大学, 情報工学部, 助教授 (50183976)
|
研究期間 (年度) |
1994 – 1996
|
研究課題ステータス |
完了 (1996年度)
|
配分額 *注記 |
10,900千円 (直接経費: 10,900千円)
1996年度: 3,300千円 (直接経費: 3,300千円)
1995年度: 3,300千円 (直接経費: 3,300千円)
1994年度: 4,300千円 (直接経費: 4,300千円)
|
キーワード | 網膜 / 水平細胞 / シナプス / グルタミン酸 / 可塑性 / ニューラルネットワーク / 抗体 / 一酸化窒素 |
研究概要 |
本研究の主対象である脊椎動物網膜は発生学的に脳の一部であり、昔から高次神経系研究の格好の材料となっている。視細胞および2次ニューロンである水平細胞が係わる外網膜神経回路について伝達物質受容やシナプス修飾の分子機構、さらに、これらが明・暗順応やS/N環境に依存して受容野や分光特性へ与える可塑的制御の仕組みを生理/薬理実験および免疫学的手法を含む形態学的方法に基づいて究明した。また、水平細胞における視覚信号処理に密接に関係する細胞内Caイオン濃度の調節機構についても多くのことが解明された。さらに、水平細胞以外の網膜ニューロン、特に双極細胞およびアマクリン細胞についても、輪郭協調等の視覚効果や速度検出の問題などに関する実験と理論モデル解析を行った。そして、これらの結果を適当なニューラルネットモデルを用いて計算論的最適化の観点からも評価を行い、成果の一部は新しい環境適応型画像処理装置の開発を目指したビジョンチップの試作という工学的研究に応用された。 (1)短波長錐体からH1水平細胞へのシナプス分子機構の解明 標記のシナプスの存在は当グループが数年前に発表したもので、これまで、等応答振幅分光入力測定という独自の方法などで、その証拠固めを行うとともに性質の究明にも力を注いできた。成果を総合的にまとめると、(a)符号反転コンダクタンス減少型、(b)2-アミノ-4-フォスフォノ酪酸(APB)がアゴニスト、(c)一酸化窒素(NO)で活性化、(d)明順応で活性化、などが列挙される。また、目下の状況証拠からは、cGMPがsecond messengerで、NOS>NO>sGC>cGMPの細胞内分子機構の存在が示唆される。 (2)H1水平細胞分光特性の可塑性に関する研究 H1水平細胞の分光感度曲線は暗順応時では赤感受性錐体と同様であるが、網膜が明順応すると短波長領域の感度が下がり、その結果、640nmにある最大感度が急峻になり感度曲線が全体的に尖ってくることが判明した。さらに、ドーパミン(DA)とNOは明順応と、また、APBとヘモグロビンは暗順応と同じ効果を与えることが分かった。このことは、DAとNOが明順応信号となって(1)のシナプスを活性化することを示唆する。 (3)明・暗順応およびNOによる水平細胞の可塑的形態変化 水平細胞の樹状突起先端の指状構造(spinule)は視細胞の軸策終末に潜り込む形で視細胞に対してシナプスを形成する。このspinuleの潜り込みは明順応またはNO供与で深くなることを電子顕微鏡解析で明らかにした。また、これを反映する効果がH2水平細胞の分光応答特性にも現われていることを確認した。(2)のケースと同様にここでもNOが明順応信号として働くことが分かった。 (4)水平細胞内Caイオン濃度調節機構の究明 網膜より単離した水平細胞を対象に膜電位固定実験およびFura-2法を用いて標記のことを行った。水平細胞内Caイオンの問題は将来的に(1)-(3)の課題と密接に関係してくるものである。視細胞からの伝達物質とされるグルタミン酸の外液投与との関係で、特にNa-Ca交換機構の動態を明らかにしたことが本研究の特長である。Na-Ca交換電流の分離にも成功し、それがrate-theoryモデルの予測に合うことを示した。 (5)その他 以下のテーマも本国際学術研究に含まれたものであるが、これらについての成果報告は紙面の関係上内容の詳しい説明は省略する。 (a)NADPHの局在探査による網膜内NO生成部位の組織学的究明。 (b)課題(1-3)で関係するAPB受容体がmGluR6であるという仮定のもとに、本受容体の水平細胞層における局在を免疫組織学に探査(結論未定)。 (c)多層ニューラルネットワークのエッジ検出学習:SNR適応受容野をもつ隠れ素子の発現とその解析。 (d)速度検出学習で隠れ素子に発現する縞々パターン時空間受容野の発現とその解析。 (e)多出力NNにおける隠れ素子の最少化と最大共用化の同時達成。「集束抑制と発散促進アルゴリズム」の開発と応用。 (f)上記課題(c)の成果および正則化理論などを反映したビジョンチップの設計と試作および性能評価。
|