研究課題/領域番号 |
06044184
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 共同研究 |
研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
高島 和希 熊本大学, 工学部, 助教授 (60163193)
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研究分担者 |
PONTON Clive バーミンガム大学, 工学部, 講師
BOWEN Paul バーミンガム大学, 工学部, 教授
KNOTT John F バーミンガム大学, 工学部, 教授
肥後 矢吉 東京工業大学, 精密工学研究所, 教授 (30016802)
頓田 英機 熊本大学, 工学部, 教授 (90040386)
CLIVE B.Pont バーミンガム大学, 工学部, 講師
PAUL Bowen バーミンガム大学, 工学部, 上級講師
JOHN F.Knott バーミンガム大学, 工学部, 教授
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研究期間 (年度) |
1994 – 1995
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研究課題ステータス |
完了 (1995年度)
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配分額 *注記 |
7,100千円 (直接経費: 7,100千円)
1995年度: 3,000千円 (直接経費: 3,000千円)
1994年度: 4,100千円 (直接経費: 4,100千円)
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キーワード | 複合材料 / 破壊 / 疲労 / 損傷評価 / 弾性率 / 内部摩擦 / 非破壊検査 / AE |
研究概要 |
金属基繊維強化複合材料は、次世代の宇宙・航空用材料として期待されているが、実用化に際しては、破壊、疲労特性の評価に加えて、非破壊的な損傷評価法の確立が重要と考えられる。しかしながら、繊維強化複合材料の損傷過程には、繊維の破断、繊維とマトリックスの剥離、マトリックス中のき裂伝播等が含まれており、これが損傷評価を複雑なものにしている。ところで、繊維強化複合材料の弾性率ならびに内部摩擦は、材料内部の欠陥、損傷と関連しており、材料評価の上で重要なパラメータと考えられる。特に、共振法による弾性率、内部摩擦の測定は、非破壊的な計測が可能であることから、品質検査に加えて、損傷評価法としての応用が期待できる。本研究では、SiC繊維強化Ti合金に対して曲げ試験により繰り返し負荷を与えることによって損傷を導入させた試料について、共振法により弾性率、内部摩擦変化を測定するとともに、アコースティック・エミッション(AE)計測を行ない、発生した損傷との対応について検討するとともに、これらのパラメータの損傷評価への適用可能性について調べた。 試料には、SiC連続繊維(SCS-6)で一方向に強化したTi-6A1-4V合金を用いた。この複合材料パネル材(厚さ2mm、積層数8、繊維体積率35%)より、長さ75mm、幅4mmの試験片を切り出した。この試験片に対して、4点曲げによって、一定振幅の繰返し荷重を与えた。繰り返し最大荷重(σ_<max>)は、本複合材料の曲げ強度(σ_B)に対して0.35〜0.75σ_Bの範囲で負荷させた。また、試験条件としては、応力比0.1、荷重繰り返し周波数10Hz、試験環境は室温大気中とした。ある一定の繰返し荷重を負荷した後、曲げ共振法によりヤング率、内部摩擦を測定するとともに、負荷中に発生したAE信号を計測した。 複合材中に発生した損傷は、最大負荷応力(σ_<max>)の値に依存して変化した。σ_<max>が0.5σ_B(σ_Bは本複合材料の最大曲げ強度)以上では繊維の破断が支配的であった。これは、この応力レベル以上では、繊維にかかる応力が繊維の破断応力を超えるために繊維の破断が先に生じ、繊維の破断に伴い発生する応力集中のために隣接した繊維が破断するためと考えられる。繊維の破断にともない大振幅のAEが発生し、この大振幅の1つのAE事象は1ヵ所の繊維の破断と完全に対応していた。内部摩擦は試料の破断直前において急上昇したが、その上昇の度合は無負荷の状態に比較して30%程度であった。これに対して、σ_<max>が0.35σ_B以下では、マトリックス中のき裂進展が主たる損傷となった。マトリックス中をき裂(このき裂は繊維によってブリッジングされている)が進展するにつれて、内部摩擦の値は上昇し、破断直前においては、無負荷のときと比較して3倍以上の増加となった。さらに、き裂の進展に伴い小振幅のAEが多数検出された。また、σ_<max>が0.35〜0.5σ_Bの範囲では、ブリッジングが生じた領域で、繊維の破断も認められた。すべての試験においてヤング率は試料の最終破断直前においも1%程度の低下しか認められなかった。これは、本複合材料では繊維とマトリックスの剥離した領域の面積が小さかったためと推定される。以上の結果を総合すると、AE計測が本複合材料の損傷評価に最も適していると考えられるが、AEは対象となる構造部材に対して常時計測を行う必要があり、これは通常の使用条件では比較的困難である。これに対して内部摩擦の変化は、構造部材の弾性振動の減衰を調べるだけで測定することが可能である。さらに、内部摩擦と損傷部におけるき裂(損傷)密度との間には相関関係が認められ、このことは、内部摩擦から損傷の程度ならびに寿命を推定することが可能なことを示しており、定期点検等に対して有効な損傷評価法として適用できることを強く示唆している。
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