研究課題/領域番号 |
06044188
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 共同研究 |
研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
原口 みさ子 鹿児島大学, 医学部, 助手 (10244229)
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研究分担者 |
住澤 知之 鹿児島大学, 医学部, 助手 (90206582)
FOJO Antonio 米国国立癌研究所, 主任研究員
吉村 昭彦 鹿児島大学, 医学部, 助教授 (90182815)
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研究期間 (年度) |
1994 – 1995
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研究課題ステータス |
完了 (1995年度)
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配分額 *注記 |
1,500千円 (直接経費: 1,500千円)
1995年度: 700千円 (直接経費: 700千円)
1994年度: 800千円 (直接経費: 800千円)
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キーワード | P-糖蛋白質 / 多剤耐性 / アドリアマイシン耐性 / MRP / グルタチオンSトランスフェラーゼ / トポイソメラーゼ / プロゲステロン / アドリアマイシン |
研究概要 |
我々は主としてP-糖蛋白質の機能の調節機構の解明を行なう予定であったが、P-糖蛋白質の関与しない多剤耐性株の解析の研究が世界的に進んだためこの研究を優先的に行ない以下の結果を得た。 1)P-糖蛋白質が担う多剤耐性に対する耐性克服薬剤であるセファランチンと突然変異誘導剤メゼレインの存在下にヒト口腔内類表皮癌KB細胞を培養し、坑癌剤アドリアマイシンを培地中に添加した。漸次、坑癌剤アドリアマイシン濃度を上昇させたところP-糖蛋白質を発現しないアドリアマイシン耐性細胞株C-A40及びC-A120がえられた。 2)そしてこのP-糖蛋白質を発現しないアドリアマイシン耐性細胞株がクイーンズ大学のコールらによって発表されたMultidrug Resistance-associated Protein (MRP)を発現していることをMRPに対する抗体を用いたウエスタンブロットによって確認した。 3)このP-糖蛋白質を発現しないアドリアマイシン耐性細胞株のアドリアマイシンにたいする耐性度とMRPの発現量はある程度まで相関するがそれ以上になると耐性度に比較しMRPの発現量の上昇が減少する。この場合トポイソメラーゼ2の発現減少が耐性をになうことが確認された。 4)クイーンズ大学のコールらによって供与されたMRPのプローブを用いて大腸癌、胃癌、肺癌におけるMRPの発現を検討し、ヒト口腔内類表皮癌KB細胞及びP-糖蛋白質を発現しないアドリアマイシン耐性細胞株C-A40及びC-A120でのMRPの発現と比較した。i)C-A40及びC-A120のMRPのmRNAの発現はKB細胞の約17倍、126倍と過剰発現していた。P-糖蛋白質が担う多剤耐性細胞であるKB-8-5及びKB-C2のMRPmRNAの発現はKB細胞とほぼ同じであった。ii)逆にC-A40及びC-A120ではMDR1mRNAの発現は過剰発現していなかった。iii)genomicDNAのスロットブロットを行った結果、C-A40及びC-A120ではMRP geneが増幅していた。iv)ヒトの癌組織におけるMRPmRNAの発現を調べたところ、胃癌20例中12例(60%)大腸癌26例中11例(42%)、肺癌25例中14例(56%)でKB細胞より高く発現していた。v)肺癌の中では、腺癌11例中3例(27%)で過剰発現がみられるのに対し、扁平上皮癌では9例中8例(89%)と非常に高い割合で過剰発現がみられた。また、扁平上皮癌細胞株L13、L20はMRP geneの増幅はみられなかったもののMRPmRNAの発現はKB細胞より高かった。vi)正常組織でのMRPmRNAの発現をKB細胞と比較したところ、胃で17検体中13検体(76%)、肺で23検体中18検体(78%)、大腸で20検体中3検体(15%)でKB細胞より高く発現していた。 vii)癌組織と正常組織でのMRPmRNAの発現を比較すると大腸癌では有意に正常組織より発現が高かったが、胃癌、肺癌では、正常組織での発現と有意の差がみられなかった。viii)MRPのペプチド抗体を用いて胃癌、肺癌での免疫組織学化学的検討を行った。MRPの発現は細胞質と細胞膜の両方にみられた。これらの結果は肺扁平上皮癌の抗癌剤耐性にMRPが関与している可能性を示している。 5)MRPはグルタチオン抱合体の輸送の輸送を担っているという報告がライエルらによってなされているため、我々の細胞株についてもロイコトリエンC4の輸送と各種薬剤による輸送の阻害について検討し、併せてシスプラチン耐性細胞とも比較した。すべての変異細胞の親株であるKB細胞とMRP高発現細胞C-A120、シスプラチン耐性細胞KCP-4、P-糖蛋白質の高発現細胞KB-C2のmemmbrane vesicleを用い、ロイコトリエンC4の輸送と輸送系の阻害について検討中である。
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