神経ペプチド受容体とそのアンタゴニストの役割に関する共同研究

• 研究課題/領域番号: 06044190
• 研究種目: 国際学術研究
• 配分区分: 補助金
• 応募区分: 共同研究
• 研究機関: 静岡県立大学
• 研究代表者: 矢内原 昇 静岡県立大学, 薬学部, 教授 (80046250)
• 研究分担者: ROSSELIN G. フランス, INSERM, 教授 ; TREGEAR G.W. オーストラリア, メルボルン大学, 教授 ; WEI S.G. 中国, 浙江省医学科学院, 教授 ; LABURTHE H. フランス, INSERM, 教授 ; BROWN J.C. カナダ, ブリティッシュコロンビア大学, 教授 ; CHRISTOPHE J ベルギィー, 自由大学, 教授 ; GARDNER J.D. 米国, セントルイス大学, 教授 ; CHEY W.Y. 米国, ロチェスター大学, 教授 ; 桑原 厚和 岡崎共同研究機構, 生理学研究所, 助手 (60142890) ; 望月 徹 静岡県立大学, 薬学部, 助教授 (00117780) ; 星野 稔 静岡県立大学, 大学院生活健康科学研究科, 助教授 (50150058) ; 矢内原 千鶴子 大阪大学, 医学部, 教授 (00046252)
• 研究期間 (年度): 1994
• 研究課題ステータス: 完了 (1994年度)
• 配分額: 3,800千円 (直接経費: 3,800千円); 1994年度: 3,800千円 (直接経費: 3,800千円)
• キーワード: セレクチン前駆体 / CCK受容体 / PACAP / ガラニン / [D-Trp^8]galanin(1-15)ol / 漢方生薬 / Helodermin / VIP

研究概要

神経ペプチドの消化管機能について、その外分泌や内分泌への効果はかなり理解されているが、神経調節については、まだ不明の問題が数多く残されている。腸管の壁内神経叢や中枢神経系には各種の調節ペプチドが部位特異的に存在、または共存し、機能調節に関与していると考えられる。これら調節ペプチドは当然標的細胞の受容体に結合し、神経内情報伝達系を介し効果を示すと考えられる。
本研究はこれら従来の研究を基盤とし、さらにこの分野の主力メンバーと国際的な共同研究を展開したものである。
本国際共同研究の成果は次の通りである。
1.セクレチン前駆体のアミノ酸配列に基づき、数種のセクレチン前駆体関連ペプチドを化学合成し、ラット、およびイヌを用い、それらの膵液分泌能を検討した。その結果、セクレチン前駆体(1-41)は、セクレチンに比し、約1/3の活性であるがセクレチン類似の作用を示すことを明らかにした。腸のみならず、脳にはセクレチン前駆体の存在が知られていることから、脳におけるセクレチン様ペプチドの研究に、重要な手掛かりを得ることができた(Chey、望月、矢内原)。
2.VIP、PACAP、Helodermin、およびガラニン受容体を、各種合成ペプチド誘導体を用いて、解析した。
PACAP(5-38)、およびPACAP(10-38)は、PACAPのアンタゴニストであることを[Ca^<2+>]iおよび受容体結合実験から証明した。また、これらアンタゴニストは、VIP、PACAP、およびHelodermin受容体を明確に区別し、PACAP受容体に特異的に作用することを明らかにした。PACAPによる[Ca^<2+>]iの増加、およびVIPの分泌亢進はPACAP(5-38)により阻害されることを証明した。ついで、G-蛋白特異抗体作製を目ざし、各種G-蛋白フラグメントをデザインし、その化学合成を実施し、目的とする抗原を得ることに成功した。本研究の目的とするG-蛋白特異抗体は細胞内情報伝達における役割を解析するうえに重要な手段を提供すると考えられる。
(Rosselin、Christophe、Laburthe、星野、望月)。
3.神経ペプチドとくにガラニンのアゴニスト、アンダゴニストの設計、化学合成、作用について総合的に研究を行っているが、本研究では特にガラニン・アゴニストの研究を実施した。この場合、すでに矢内原らにより、ガラニンのアゴニストであることが証明されたgalanin(1-15)olを基本構造とし、各種誘導体を化学合成した結果、[D-Trp^8]galanin(1-15)olがgalaninに比し、約8倍の受容体結合活性を示すことを明らかにし、今後のガラニン・アンタゴニスト開発に、重要な情報を提供することができた(矢内原、望月、矢内原千鶴子、Tregear)。
4.各種神経ペプチドの壁内神経叢における作用を検討した結果、PACAP38およびPACAP27がイオン輸送に強力なアゴニストとして作用し、一方、PACAP(1-15)がアンタゴニストとして作用することを見いだした(桑原)。
5.漢方生薬抽出物について、CCK受容体との結合を検討した結果、柴胡抽出物の低分子量画分が、CCK受容体と結合することを見いだした。この知見は柴胡成分にCCKのアゴニストまたはアンタゴニストが含まれることを示唆し、現在その単離・同定を検討中である(Gardner、Wei、Brown、望月、矢野原)。
以上、「神経ペプチド受容体とそのアンタゴニストの役割に関する共同研究」において、ペプチド合成化学的アプローチにより、各分野の主力メンバーと国際的な共同研究を展開することにより、神経ペプチド-受容体認識機構の解析を分子レベルで行い、脳セクレチンの解析を可能にし、また、PACAPアンタゴニストの発見、ガラニンのスーパーアゴニストの発見、ならびに漢方生薬抽出物の低分子画分にCCKアゴニストまたはアンタゴニスト候補を見いだすことができた。さらに細胞内情報伝達に関与するG-蛋白を区別しうる抗体の作製に着手し、今後のこの分野の発展に大きく貢献できると考えられる。

研究成果

• [文献書誌] Min Li: "Cholera toxin enhanced cAMP production stimulated PACAP in human neuroblastoma NB-OK-1 cells" Biomed. Res.15. 233-239 (1994)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(和文)」より
• [文献書誌] Peter B.: "Galanin-(1-15),but not galanin-(1-29),modulates 5-HT_<1A> receptors in the dorsal hippocampus of the rat brain:Possible existence of galanin receptor subtypes" Brain Res.634. 163-167 (1994)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(和文)」より
• [文献書誌] Jose A.: "Intracisternally injected galanin-(1-15) modulates the eardiovascular responses of galanin-(1-29) and the 5-HT_<1A> receptor agonist 8-OH-DPAT" Eur.J.Pharmacol.257. 257-265 (1994)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(和文)」より
• [文献書誌] J.R.Reeve Jr.: "Cholecystokinin and related peptides,Ann,N.Y.Acad.Sci.Vol.713" The New York Academy of Sciences,New York, 11 (1994)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(和文)」より
• [文献書誌] G.E.Rosselin: "International Symposium on VIP,PACAP & related peptides from molecular biologyto clinical applications 1993" World Scientific Publishing,France, 6 (1994)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(和文)」より
• [文献書誌] G.E.Rosselin: "International Symposium on VIP,PACAP & related peptides from molecular biologyto clinical applications 1993" World Scientific Publishing,France, 7 (1994)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(和文)」より
• [文献書誌] G.E.Rosselin: "International Symposium on VIP,PACAP & related peptides from molecular biologyto clinical applications 1993" World Scientific Publishing,France, 10 (1994)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(和文)」より
• [文献書誌] Y.Okada: "Peptide Chemistry 1993" Protein Research Foundation Osaka, 4 (1994)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(和文)」より
• [文献書誌] Min Li: "Cholera toxin enhanced cAMP production stimulated PACAP in human neuroblastoma NB-OK-1 cells" Biomed.Res.15. 233-239 (1994)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(欧文)」より
• [文献書誌] Peter B.: "Galanin- (1-15), but not galanin- (1-29), modulates 5-HT_<1A> receptors in the dorsal hippocampus of the rat brain : Possible existence of galanin receptor subtypes" Brain Res.634. 163-167 (1994)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(欧文)」より
• [文献書誌] Jose A.: "Intracisternally injected galanin- (1-15) modulates the cardiovascular responses of galanin- (1-29) and the 5-HT_<1A> receptor agonist 8-OH-DPAT" Eur.J.Pharmacol.257. 257-265 (1994)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(欧文)」より
• [文献書誌] J.R.Reeve Jr.: The New York Academy of Sciences, New York. Cholecystokinin and related peptides, Ann.N.Y.Acad.Sci.Vol.713, 107-117 (1994)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(欧文)」より
• [文献書誌] G.E.Rosselin: World Scientific Publishing, France. International Symposium on VIP,PACAP & related peptides from molecular biologyto clinical applications 1993, 173-178 (1994)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(欧文)」より
• [文献書誌] G.E.Rosselin: World Scientific Publishing, France. International Symposium on VIP,PACAP & related peptides from molecular biologyto clinical applications 1993, 474-480 (1994)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(欧文)」より
• [文献書誌] G.E.Rosselin: World Scientific Publishing, France. International Symposium on VIP,PACAP & related peptides from molecular biologyto clinical applications 1993, 577-586 (1994)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(欧文)」より
• [文献書誌] Y.Okada: Protein Research Foundation, Osaka. Peptide Chemistry 1993, 325-328 (1994)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(欧文)」より