研究分担者 |
AROCHA Pinan ベネズエラ科学研究所, 主任研究員
WEISEL John ペンシルバニア大学, 医学部, 教授
朝倉 伸司 自治医科大学, 医学部, 講師 (70245033)
三室 淳 自治医科大学, 医学部, 講師 (10221607)
諏合 輝子 自治医科大学, 医学部, 講師 (60183844)
AROCHA-PINANGO Carmen Lo Instituto Venezolano de Investigaciones Cientificas, Centro Medicina Experimenta
AROCHAーPINAN ピニャンゴ カルメンルイ ベネズエラ科学研究所, 主任研究員
CARMEN Louis ベネズエラ科学研究所, 主任研究員
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研究概要 |
1)遺伝性異常Fbgの構造機能関係の解析:3年間を通して国内外から10家系以上の異常Fbg分子(発見された都市名で示す)の解析を依頼された.国内からの検体で,γGly-268→Glu(Kurashiki I,ホモ接合体)およびΒβAsn-160→Ser(Niigata)という新変異型の他,AαArg-19→Gly(Kumamoto,但しこの型は欧州で2家系の報告がある)を同定した.Kurashiki Iについては次項で述べるが,新しい機能障害の機序が見出された.Kumamotoで同定されたAαArg-19→Glyでは,トロンビンとの結合不全が確認され,患者で発症している一過性虚血性病変(右視力障害と同側の下肢の脱力)と関連づけた論文を投稿中である.Niigataでは,点変異のためにAsn-X-Serという糖付加構造が新たに形成され,実際,二又アンテナ構造を持つオリゴ糖が同定された.国外からの異常分子として本研究の初期に入手したMarburg Iは、α鎖遺伝子上での点変異から停止コドンが早期に出現する為,α鎖C末150アミノ酸残基の欠失があり,この短縮したα鎖の一部に血清albumin(Alb)が結合している.安定化Fbnの形成時に,正常分子とは異なりα鎖とγ鎖間でαm・γn(m≠n)という架橋形成が観察された.また短絡α鎖に結合しているAlbが他のFbnのγ鎖に架橋結合すること,この時Fbnはplasminに抵抗して溶解されなくなることを見出した.このような異常な架橋形成機序に加えて,余剰のAlbがFbn-γ鎖に架橋結合されるということから,形成されたFbn塊が立体構造上,正常分子とは大きく異なっていることを示唆している.これらの成績を発端者での出血,血栓症,創傷治癒不全と関連づけて目下投稿を準備中である.Guarenas I(Venezuela)は先方の共同研究者輩下の若手研究者が平成7年11月に来訪し1ヶ月滞在して構造解析に参加した.この検体は今だ検索を続けている. 2)異常分子の電顕学的解析:米国Wisconsin大学,Mosesson教授(本研究の研究分担者ではないが,従来より研究代表者と共同研究を続けて来ている)に電顕による分析を依頼していたTokyo IIで,2本鎖Fbn-protofibrilが形成される時,縦に連なるFbn分子間の新たな結合様式の存在とその機能不全が確認され,D:D self-association sitesと名づけて共同研究として報告した(J.Clin.Invest.90:1053-1058,1995).同様の機能障害はKurashiki Iでも確認され,Fbn重合の分子機作モデルを提示して報告した(Blood 87:4684-4694,1996).これまでに報告されたγ鎖の構造異常はすべてγ鎖カルボキシル基近傍,すなわちγ(275-375)位内に存在し,Fbnの重合障害を主微とする.これらはD:D self association sitesの考えを導入すると,γ鎖異常を'a'siteの異常'a'異常とD:D self association sitesの異常('D:D'異常)とに分類することが出来る.それに呼応して'a'異常群ではXIIIa因子によるγ鎖間の架橋が遅延し,'D:D'異常群ではこれが正常であることも判明し,この辺の作用機序をまとめて報告した(Intern.J.Hematol 64:167179,1996).Arocha-Pinango博士(国外の研究分担者)から依頼され,Caracas IIとして報告していた分子(J.Biol.Chem.266:11575-11581,1991)ではPennsylvania大学Weisel教授(国外の研究分担者)と電顕学的解析を進めた結果,Fbg分子とFbnゲルの立体構造に著しい異常を認めた.即ち,通常閉鎖しているαC-αC領域は,余剰糖鎖の強い陰性荷電により反撥し合って開放さていること,形成されたFbn線維の網状構造が著しく不整であり,しかもFbnゲルではFbn線維Fbn線維の断裂が著しく,処々に洞状の構造があること,この為,水透過性が高いことなどが判明した.これだけ不整なFbn線維であるにも拘らず,患者で血栓症が発症していないのは,この高い透過性に由るものと推察された.これらの所見を共同研究として報告した(J.Biol.Chem.271:4946-4953,1996).
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