研究課題/領域番号 |
06044197
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 共同研究 |
研究機関 | 慶応義塾大学 |
研究代表者 |
深沢 俊夫 慶応義塾大学, 医学部, 名誉教授 (90029934)
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研究分担者 |
鈴木 ゆり子 慶応義塾大学, 医学部, 助手 (40255435)
LORCH Y. スタンフォード大学, 医学部, 博士研究員
JOHNSTON S.A テキサス大学, 医学部, 準教授
KORNBERG R.D スタンフォード大学, 医学部, 教授
和田 忠士 東京工業大学, 生命理工学部, 助手 (60262309)
半田 宏 東京工業大学, 生命理工学部, 教授 (80107432)
桜井 博 慶応義塾大学, 医学部, 助手 (00225848)
BERK A.J. カリフォルニア大学ロスアンゼルス校, 分子生物研究所, 教授
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研究期間 (年度) |
1994 – 1995
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研究課題ステータス |
完了 (1995年度)
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配分額 *注記 |
6,100千円 (直接経費: 6,100千円)
1995年度: 3,000千円 (直接経費: 3,000千円)
1994年度: 3,100千円 (直接経費: 3,100千円)
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キーワード | ガラクトース / 再構成系 / 基礎転写 / 基本転写因子 / 燐酸化 / サッカロミセス属酵母 |
研究概要 |
1:ガラクトース添加から遺伝子発現に至る情報伝達機構 (1)Gal3pとGal80pの相互作用;旺盛に増殖中の酵母培養液中にガラクトースを添加すると、数分のうちにこの糖を代謝する酵素系遺伝子群(以下GAL遺伝子)の転写が始まる。この迅速な転写誘導にはGAL3と呼ばれる遺伝子が関与していることが古くから知られていた。1990年Hopperらは、GAL3がコードするタンパク、Gal3pを細胞内で過剰生産すると、GAL遺伝子の発現が構成的に行われるようになることを報告した。初年度われわれは、このとき負の調節タンパクGal80pを同時に過剰生産すると、GAL遺伝子の構成的発現が抑えられることを発見した。さらに融合遺伝子技術を用いてインフルエンザウイルスの血球凝集素(HA)のエピトープをアミノ末端に持つようにしたGal3p(HA-Gal3p)を発現させた酵母をガラクトースを炭素源とする培地中で増殖させ、その細胞抽出液を抗HAモノクローナル抗体で処理すると、HA-Gal3pとともにGal80pが沈殿することがわかった。このとき酵母をグルコース存在下で増殖させておくとGal80pの沈殿は見られなかった。Gal3pとともにGal80pを過剰生産しておくと炭素源の種類によらずHA-Gal3p/Gal80p複合体形成が見られた。つまり、HA-Gal3p/Gal80p複合体の形成はガラクトース誘導と関連しているのかどうかは結論できない。そこでHA-Gal3pの機能を失つたミスセンス変異を分離し、これらのGal80pと結合する能力を検討した。その結果、得られた3株はすべてGal80pと結合する能力を失っている。すなわち、Gal3pのGal80p結合能はその機能と密接に関連していることが判明した。 (2)Gal4pの活性化;以前から正の制御遺伝子GAL4産物(Gal4p)を過剰生産すると、GAL遺伝子の発現が構成的に行われるようになることおよび、Gal4pとGal80pは細胞内で安定な複合体として存在することがわかっていた。今回の成果を併せて考えると、GAL遺伝子の転写誘導にはこれら3つの制御タンパク間の相互作用を基調としたモデルが考えられる。現在までのところ、3つすべてを含む複合体は認められないところから、Gal4pはGal80pと結合していると不活性状態であるが、Gal80pにGal3pに結合するとGal4pが遊離して活性を取り戻すと思われる。今後の分子レベルでの検証が待たれる。また3つのタンパクのいずれにガラクトースのシグナルが伝えられるのかも未定である。ただし、Gal4pの活性化と燐酸化とは無関係であることを強く示唆する結果を得た。 2、特異的転写活性化因子と基礎転写複合体との相互作用 1)Gal11pの作用機構;Kornbergらの確立した、5つの基礎転写因子(TFIIB,TFIID,TFIIE,TFIIF,TFIIH,)とRNA polymerase IIからなる再構成転写系を用いて、Gal11pが基礎転写を促進することを示した。この際、特異的転写活性化因子のシグナルを基礎転写複合体に伝達する働きは示さない。また、試験管内でGal11pがTFIIEと結合することが判明した。このとき、Gal11pの機能に必要な2つの機能領域(116から255番アミノ酸領域および866から929番アミノ酸領域)が、それぞれTFIIEの大小2つのサブユニットと結合する。一方ではGal11pがRNA polymerase IIのホロ酵素の中に集中的に含まれていることがKornbergらによつて見いだされた。このホロ酵素は、TFIIFとTFIIDの存在下で特異的転写活性化因子によって活性化される。これらのことを総合的に解釈すると、Gal11pは細胞内でTFIIEをホロ酵素に引寄せることによって基礎転写を促進していることを示唆している。 2)Gal11pと共同して働く転写因子の検索;鈴木らは、独特のスクリーニング法を用いて、GAL11機能不全株と共存すると細胞を死に至らしめる変異株を分離し、責任遺伝子をクローン化する事に成功した。これがGal11pと共同して働く転写因子をコードしているかどうかは未解決のまま今後に残された。
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