研究課題/領域番号 |
06044199
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 共同研究 |
研究機関 | 上智大学 |
研究代表者 |
熊倉 鴻之助 上智大学, 理工学部, 教授 (70129790)
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研究分担者 |
DUCHEN Micha ロンドン大学生理学教室, Reader
TATHAM Peter ロンドン大学生理学教室, Senior Lec
GOMPERTS Bas ロンドン大学生理学教室, 教授
秀 和泉 広島大学, 医学部, 教務員 (20253073)
今泉 美佳 上智大学, 理工学部, 助手 (40201941)
井上 和秀 国立衛生試験所, 薬理部, 室長 (80124379)
寺川 進 浜松医科大学光量子医学研究センター, 教授 (50014246)
DUCHEN Michael R. Reader, Department of Physiology, University College London
MILLAR Julli クイーン, メリー&ウェストフィールド大学・生理学教室, Senior Lec
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研究期間 (年度) |
1994 – 1995
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研究課題ステータス |
完了 (1995年度)
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配分額 *注記 |
11,400千円 (直接経費: 11,400千円)
1995年度: 5,600千円 (直接経費: 5,600千円)
1994年度: 5,800千円 (直接経費: 5,800千円)
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キーワード | 開口放出の調節機構 / クロマフィン細胞 / GTP結合蛋白質 / 蛋白質リン酸化 / 実画像解析 / 分泌顆粒の運動 / 細胞骨格系蛋白質 / 単一細胞からの放出測定 / Amperometric detection |
研究概要 |
開口放出の細胞内調節機構について,本年度は以下の研究成果を得た。 1.ATP依存性プライミング機構 クロマフィン細胞では、ATP依存性に開口放出がプライミングされるためにはミオシン軽鎖キナーゼが必須因子である。ミオシンリン酸化の役割を明確にするために、それと密接に関連するアクチン-ミオシン相互作用ならびにアクチン繊維の関与を調べた。アクチン-ミオシン相互作用の特異的阻害毒およびアクチン繊維切断物質の作用解析から、ATP依存性プライミングにはアクチン-ミオシン相互作用が必須であること、ならびに形質膜直下のアクチン・ネットワークの切断・再構築が重要な役割を持つことが明らかとなった。さらに、この機構による分泌顆粒の供給が、生理的な分泌応答のキネティクスを形成する重要な因子であることが示唆された。これらの成果の一部分は、国際神経化学会議サテライト・シンポジウム、国際クロマフィン細胞生物学会議、ならびに北米神経科学会議において発表した。一方、ATP依存性プライミング過程はGoによって抑制的に調節され、CキナーゼとGAP43がこのGoの活性調節に関わる可能性が示唆されていたが、GAP43の部分フラグメントの作用解析から、このGO活性の調節には何らかの可溶性因子の存在が必要であることが示唆された。 2.単一細胞からの開放放出の実画像測定と、放出同時測定による解析 初年度に、ビデオマイクロスコープによる単一細胞からの開口放出の実画像解析と、カーボンファイバー電極による放出測定を同時に同一細胞で行うことに成功した。本年度はこの測定解析を継続した結果、大部分の細胞で、電流のスパイクとビデオ画面上の顆粒の開口の間に相関が認められた。カテコールアミン量を反映する電流スパイクの大きさは、電極と顆粒の弾ける位置までの距離と逆相関し、電流スパイクの持続は画面上で測定される顆粒の開口速度との相関を示した。以上の結果から、両者の信号が正しく開口放出をとらえていることが示された。また、カーボンファイバー電極による放出測定ではいくつかの細胞から、いわゆるフ-ジョン・ポアの形成を示唆する電流が記録されたが、ビデオ画像上での識別は困難であった。ビデオ画像上では、開口後に残る陥没膜の盛衰の過程を同定することが可能となったので、今後は、開口放出に続くエンドサイトーシスの解析も興味深い。これらの成果の一部は、イギリス生理学会に発表を許され、J.Physiology(Vol.487,59P-60P,1995)に掲載された。また、日本生物物理学会年会において発表した。 GTP結合蛋白質、シナプス蛋白質の機能 モルモットの好酸球の分泌反応に関わる細胞内信号分子を解析した結果、膜容量測定による分泌反応の測定結果と一致して、GTPとカルシウムが開口開始に最も基本的な細胞内信号となっていることが明らかとなった。また、カルシウムは単独で分泌顆粒の運動停止をもたらし、GTPと共働して開口をもたらすと考えられた。肥満細胞でも同様の機構がイギリス側研究者によって明らかにされ、その機構の一部として、単量体G蛋白質が同定された。シナプス蛋白質との関連、細胞骨格系蛋白質との関連は、未だに不明であるので今後の重要な研究課題である。 ATPによる調節機構 PC12細胞において、初年度の研究から、P2受容体を介するATP応答が亜鉛イオンによって増強されることが明らかになった。最近のP2受容体サブクラス分類に従ってアゴニスト等の作用解析を進めた結果、UTPに選択性の高いP2受容体を介して、UTPはカルシウムの細胞内流入および細胞内貯蔵部位からのカルシウム遊離を引き起こし、PC12細胞からドーパミン放出を引き起こした。亜鉛イオンはこのカルシウム流入を阻害し、ドーパミン放出を阻害したが、細胞内貯蔵部位からのカルシウム遊離には影響しなかった。このことから、ATPが複数のタイプの異なる受容体を介して伝達物質放出を制御する可能性が示唆された。これらの成果は、北米神経科学会議において発表した。
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