1991-92年出土敦煌懸泉置漢簡の研究

• 研究課題/領域番号: 06044211
• 研究種目: 国際学術研究
• 配分区分: 補助金
• 応募区分: 共同研究
• 研究機関: 関西大学
• 研究代表者: 大庭 脩 関西大学, 文学部・東西学術研究所, 教授所長 (50067451)
• 研究分担者: 徐 建新 中国社会科学院, 世界史所, 副研究員 ; 陳 波 関西大学, 文学部, 講師 ; 鵜飼 昌男 関西大学, 文学部, 講師 ; 吉村 昌之 関西大学, 文学部, 講師 ; 上島 紳一 関西大学, 総合情報学部, 教授 (10184920) ; 籾山 明 埼玉大学, 教養学部, 教授 (70174357) ; 永田 英正 (永田 秀正) 京都大学, 文学部, 教授 (90027532) ; XU Jianxin Assistant Researcher, Institute of World History, Chinese Social Academy. ; CHEN Bo Lecturer, Faculty of Letters, Kansai Univ. ; 徐 世虹 中国政法大学, 法律古籍所, 副教授 ; 裘 錫圭 北京大学, 中文系, 教授 ; 張 伝璽 北京大学, 歴史系, 教授
• 研究期間 (年度): 1994 – 1995
• 研究課題ステータス: 完了 (1995年度)
• 配分額: 11,500千円 (直接経費: 11,500千円); 1995年度: 5,200千円 (直接経費: 5,200千円); 1994年度: 6,300千円 (直接経費: 6,300千円)
• キーワード: 居延漢簡索引 / エチナ河流域 / 甲渠候官 / カラホト / 刻歯木簡 / Tally / 敦厚懸泉置 / 連雲港市 / 敦煌漢簡 / ローマ木簡 / ヴィンドネッサ / 荊州博物館 / 懸泉置漢簡 / 居延新簡

研究概要

1)地名、人名、官職その他、物品、語句考証論文及び一字索引よりなる『居延漢簡索引』(全420頁)を完成、刊行した。この成果は本補助金と、これに先立つ、平成2、3年度の1930-31年出土居延漢簡の研究(課題番号02044146)、平成4、5年度の1973-74年出土の居延漢簡の研究(課題番号04044152)の成果とを総合して完成したものである。
2)居延漢簡が発掘された内蒙古自治区エチナ河流域の、甲渠候官址、カラホト等の実地調査を行い、移籍の影像を含む現状報告書を作成した。この調査は、NHK取材班が「シルク・ロード」番組作成の為に現地を訪問して以来の外国人の訪問で、特に漢簡を中心テーマに外国人が調査に入ったことは前例がない。
3)籾山分担者が行った台湾、中央研究院歴史語言研究所所蔵刻歯木簡の調査は、同分担者がここ数年来継続してきた刻歯木簡、木簡の右側に刻みの入った木簡の確認の為の実地調査で、数値の記載のある木簡には、その数値を示す百、十、一などの刻み方のルールがあり、その刻みを入れることによって、文字面が改ざんされても、真実を示すようにほどこされた処置である。この発見は漢簡の実物を精査することによって到達し得た結論で、門田協力者が発見した、細い木枝から簡材を作成した場合におこる鈍角梯形両行簡の形態、冊書編成前に刻む編をかける目印などと共に、木簡を実見することによる研究の成果があがっており、常時実物を手にできる中国研究者がこれらの事実を見逃していることは、日本人研究者の観察の細かさの特色が現れているともいえるし、中国人が文字を中心に見ている研究法の欠陥ともいえ、共同研究の成果の特筆すべき点かと思料する。
4)上記の刻歯の存在は、西洋中世の木簡にTallyとしてあらわれているのと共通の現象で、ローマ時代の木簡などの西洋の書写材料と比較研究を行うことが中国木簡研究に有効な刺激効果を及ぼすものであることを認めしめる。
5)今年度初頭、ようやく居延漢簡の一部、甲渠候官中心の出土簡の写真版が出版された。この出版には長い時間を要したが、中国内の極端な利益追求の風潮による、学術出版の減少が印刷出版段階において時間を空費した以外に、発掘関係者間の巧名争いが原稿提出を遅延させた。このような事情は、共同研究者として効果的な協力の余地がなく、学界全体に及ぼす悪影響は防ぐ有効な手段がない。また、写真整版技術が拙劣である為、写真原稿の段階で見た精確な写真が、出版されてみると使用に耐えない結果となる。日本の技術で製品の制度を向上させる協力を図ってみたが、金銭的折れ合いがつかず、計画は失敗に終わった。木簡の釈文作業の段階で赤外線テレビを導入すれば、台北の居延漢簡や奈文研の日本木簡などで実証されている効果を期待できるのであるが、そのような設備機器の提供が本研究費補助金では不可能であるのは、いささか残念である。
6)敦煌懸泉置出土簡の釈読作業は、中国においてはほぼ終了し、出版に作業の中心が移る。この発掘は居延新簡に比較すれば、全く単一の機構で行われ、その機関、甘粛省文物考古研究所が釈読作業を行ったのであるから、居延漢簡に比較すれば成果の刊行、研究者の共有は早いものと期待される。
7)『居延新簡』の出版により、新旧居延漢簡と総合して研究することが可能となった。次年度以降に計画される研究は、両居延漢簡の統一的な総合であると考えている。
8)江蘇省連雲港市所在の漢墓から約150簡の副葬木簡が出土し、漢代東海郡の交通関係の上計の木簡が含まれている。将来、懸泉置漢簡と共に交通史の資料が増加することは明らかで、両方の出版ができれば、その面からの研究が進展するものと期待される。

研究成果

• [文献書誌] 籾山,明: "刻歯漢牘初探-漢簡形態論のために-" 木簡研究. 17. 165-186 (1995)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(和文)」より
• [文献書誌] 大庭,脩・鵜飼,昌男・門田,明・吉村,昌之: "居延地区の現状と新出漢簡情報" 関西大学東西学術研究所紀要. 29. (1996)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(和文)」より
• [文献書誌] 大庭,脩: "武威旱灘坡出土の王杖簡" 史泉. 82. 1-17 (1995)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(和文)」より
• [文献書誌] 大庭,脩・鵜飼,昌男・門田,明・吉村,昌之: "居延漢簡索引" 関西大学出版部, 420 (1995)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(和文)」より
• [文献書誌] A Study of Chinese Wooden Writing Tablets with Notches on their Sides in Han Dynasty Period: Proceedings of Japanese Society for the Study of Wooden Documents. 17. 165-185 (1993)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(欧文)」より
• [文献書誌] OBA,Osamu & others: "Modern Scenery of Edsen-gol Region and the Informations of Han Wooden Strips which Newly found in Recent Few Years" Bulletin of the Institute of Oriental and Occidental Studies, Kansai University. No.29. (1996)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(欧文)」より
• [文献書誌] OBA,Osamu: "Another Collection of "Decrees and Edics Concerning the Royal Cane for Elderly People" found at Wu-wei" Shisen. Vol.82. 1-17 (1995)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(欧文)」より
• [文献書誌] OBA,Osamu: Kansai University Press. Index of Han Wooden Strips tound at Ju-yan in 1930-31 and 1973-7, 1-420 (1995)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(欧文)」より