研究課題/領域番号 |
06044217
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 共同研究 |
研究機関 | 高エネルギー物理学研究所 |
研究代表者 |
大隅 一政 高エネルギー物理学研究所, 放射光実験施設, 教授 (70011715)
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研究分担者 |
ZOLENSKY Mic 米航空宇宙局, ジョンソンスペースセンター, 宇宙科学者
宮本 正道 東京大学大学院, 理学系研究科, 教授 (70107944)
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研究期間 (年度) |
1994
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研究課題ステータス |
完了 (1994年度)
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配分額 *注記 |
3,200千円 (直接経費: 3,200千円)
1994年度: 3,200千円 (直接経費: 3,200千円)
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キーワード | 惑星間塵 / 極微小結晶 / 精密結晶構造 / 結晶組織 / 放射光X線 / 白色ラウエ法 |
研究概要 |
本科学研究費補助金(国際学術研究:共同研究)を受けて行った研究は、米航空宇宙局ジョンソンスペースセンター(NASA/JSC)によって収集され、予備的な研究が為されている惑星間塵(interplanetary dust particles:IPDs)を対象として従来は全く行われていないX線回折法に基づく詳細な結晶学的評価を行おうとするものである。NASA/JSCによって行われている研究は主に電子線による科学組成分析或いは電子顕微鏡による結晶形態等の観察が主であり、これらの実験手法によっては多型を有する鉱物の場合には相の同定も不可能であり、詳細な結晶構造・組織の解析には到っていない。これまで必要ではあってもX線回折実験が行われていないのは、IDPsのサイズが数ミクロンからせいぜい十数ミクロン程度であって市販のX線発生装置から得られるX線では強度不足のため全く実験が不可能であることによる。この様な状況から我々は強力なX線を得られる放射光を利用することによってIDPsの物質科学的研究に、物質の最も基礎的且つ不可欠な情報を与える結晶学的研究を付加するための実験を始めた。 上述のようにIDPsはNASA/JSCによって予備的な研究がなされカタログ化されている。それらの中から研究上重要であって、なおかつ放射光X線による回折実験に適する試料を選択することが必要である。このために平成6年7月に研究協力者(萩谷健治:姫路工大助手)と共にNASA/JSCを訪れ、試料の選択及びそれらの回折実験用ガラス製試料支持棒への接着・固定を行った。試料は珪酸塩、硫化物及び合金で合計6個である。 10月にこれら試料の予備的な回折実験を行った。実験は放射光白色X線を利用するラウエ法によって行った。この結果、殆どすべての試料は数個の微小結晶の集合体であり、また回折プロファイルからそれらの結晶には何れもかなりの乱れがあることが判明した。 11月には、Dr.M.Zolensky(NASA/JSC:研究分担者)及びDr.N.G.Barlow(Lunar and Planetary Institute、月惑星科学研究所:研究協力者)が来日し、高エ研放射光実験施設において10月に行った予備実験の結果に基づいて再度回折実験を行った。白色X線を用いるラウエ法による結晶性物質の同定及び構造精密化は極微小結晶の解析法として我々が世界に先駆けて開発している手法である。必要な場合には単色化したX線を試料に導入することも可能であり、この時の実験においては、サイズが十ミクロンを越える試料について1.0オングストロームに単色化したX線を用いて振動写真法を適用した。この時期に行った実験で、ほぼ解析に必要なデータを収集することができた。 各試料についての結晶性評価を以下に示す。 L2005 AE6 (Fe,Ni)硫化物 結晶格子に乱れを含む L2005 AF12 珪酸塩 結晶性の良い鉱物と悪い鉱物の2種 L2005 AG17 Fe硫化物 或る結晶学的方位を共通とする結晶格子の乱れを含む L2006 L11 FeNi合金 微細結晶集合体 L2006 O5 AlMg合金 微細結晶集合体 L2011 P3 珪酸塩 結晶性の良い鉱物と悪い鉱物の2種 現在は試料の中から比較的結晶性の良い試料(L2005 AE6)に対して構造精密化を行っている。 これらの解析結果に基づき、平成7年3月にNASA/JSCにおいてDr.M.Zolensky(研究分担者)と今年度得られた成果についての検討を行った。 また、この研究打ち合わせから、今後は研究対象を惑星間塵(IPDs)に限定せず、光学顕微鏡観察用に薄片状に成形した隕石中の炭化物を試料に加えることとした。薄片試料を対象とした微小領域実験法の開発も進めており、現在得られている機能で充分解析可能であるので直ちに対応が可能である。
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