研究課題/領域番号 |
06044235
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 共同研究 |
研究機関 | 岡崎国立共同研究機構 |
研究代表者 |
長濱 嘉孝 岡崎国立共同研究機構, 基礎生物学研究所, 教授 (50113428)
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研究分担者 |
GRAU E.Gordo ハワイ大学, 海洋研究所, 教授
DONALDSON Ed カナダ海洋研究所, 主任
CREWS David テキサス大学, 動物学教室, 教授
中村 將 (中村 将) 帝京大学, 法学部, 助教授 (10101734)
小林 亨 岡崎国立共同研究機構, 基礎生物学研究所, 助手 (30221972)
田中 実 岡崎国立共同研究機構, 基礎生物学研究所, 助手 (80202175)
吉国 通庸 岡崎国立共同研究機構, 基礎生物学研究所, 助教授 (50210662)
PATINO Reyna テキサステック大学, 助教授
CRAIG Morrey ハワイ大学, 海洋研究所, 研究員
松山 倫也 九州大学, 農学部, 助教授 (00183955)
CREWS Davd L テキサス大学, 動物学教室, 教授
MORREY Craig ハワイ大学海洋研究所, 研究員
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研究期間 (年度) |
1994 – 1996
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研究課題ステータス |
完了 (1996年度)
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配分額 *注記 |
12,100千円 (直接経費: 12,100千円)
1996年度: 3,500千円 (直接経費: 3,500千円)
1995年度: 4,200千円 (直接経費: 4,200千円)
1994年度: 4,400千円 (直接経費: 4,400千円)
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キーワード | 性分化 / 性決定 / 性ホルモン / 魚類 / 爬虫類 / 分子生物学 / ステロイド代謝酵素 / 性転換 / ティラピア / 芳香化酵素 / エストロゲン / アンドロゲン / 11β水酸化酵素 / 抗体 / 性ステロイドホルモン / は虫類 / 11-ケトテストステロン / ステロイド代謝酵素遺伝子 / エストラジオール-17β |
研究概要 |
本研究では、日本加3国の研究者が協力して魚類と爬虫類の性決定と分化の分子機構を明らかにする目的で計画された。 ハワイ産ベラ(Thalassoma duperrey)は雌性先熟魚であり、その雌は孵化後稚魚期を経て一年以内、全長6cmの大きさに成長すると、成熟し産卵を開始する。産卵を繰り返しながら成長を続け、2年後に12.5cmくらいに達すると性転換し雄となる。また、釣りなどにより得られた成熟した大きな雌とそれよりも小さな雌と同一水槽中で飼育すると、大きな方の雌が性転換し雄となる。したがって、本種は生殖腺の性分化機構を解析する格好な実験モデルとなる。本研究の主要な目的は、このハワイ産ベラ成魚における雌から雄への性転換に果たす性ホルモンの役割を日米双方が協力して明らかにすることである。まず、性ホルモンの生合成の初期過程を制御するステロイド代謝酵素であるコレステロール側鎖切断酵素(P450scc)の局在と性転換に伴う変動を特異抗体を用いた免疫組織化学法で調べた。性転換前の雌ではP450sccは卵胞の莢膜細胞に局在した。性転換に伴いP450sccの局在は間質組織のステロイド産生細胞に移るとともに、P450scc陽性細胞の数は性転換が進行するつれ増加し、性転換後の精巣で最大となった。次に、エストロゲンとアンドロゲンの生合成にそれぞれ重要な役割を果たす芳香化酵素と11β-水酸化酵素についてmRNAおよび蛋白質レベルで解析した。その結果、mRNAおよび蛋白質ともに、芳香化酵素は性転換前の雌の顆粒膜細胞で最大な活性を示したが、性転換開始に伴い消失し、一方、11β-水酸化酵素の活性は性転換開始後に高まり、性転換を完了した雄の精巣で最大となった。これらの結果から、ベラ卵巣および精巣の形成と維持にそれぞれエストロゲンとアンドロゲンが重要な働きをすることが明らかとなった。 ティラピア(Oreochromis niloticus)は孵化後23-25日で生殖腺の性分化が形態的(卵巣腔と輸精管の形成)に明確となる。また、未分化生殖腺をもつ遺伝的な雌および雄稚魚にエストロゲンとアンドロゲンを処理するとそれぞれ雄と雌に性転換させることが可能である。したがって、性ホルモンによる生殖腺性分化機構を解析するには良い実験モデルとなる。本研究では、エストロゲンとアンドロゲンの生合成に関わる4種のステロイド代謝酵素(
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P450scc;3β-ステロイド水酸基脱水素酵素、3β-HSD;17α-水酸化酵素、P450c17;P450arom)の特異的抗体を用いた免疫組織化学により、ティラピアの性分化時生殖腺におけるステロイドホルモンの生合成の有無について解析した。その結果、孵化後15日の約半数の個体の未分化生殖腺でエストラジオール-17βの生合成に必要な4種のステロイド代謝酵素の全てが観察された。陽性反応は間質組織のステロイド産生細胞に局在していた。この反応は卵巣分化時にさらに強さを増した。一方、残りの半数(遺伝的に雄と推察される)では、性分化前後の生殖腺ではこれら4種のステロイド代謝酵素の発現はほとんど認められず、孵化後60-70日の精巣で精子形成の開始時期になりP450arom以外のアンドロゲン合成に必要な3種のステロイド代謝酵素(P450scc、3β-HSDP、450c17)の強い反応が観察された。これらの精巣はステロイドホルモン処理により得られた遺伝的雌と雄を用いた同様な実験からも確認された。さらに、メチルテストステロンにる遺伝的雌の雄への転換時の生殖腺ではP450aromの発現は認められず、エストロゲンの合成は起こらないと推察される。これらの結果からティラピアではエストロゲン(エストラジオール-17β)が生殖腺の性分化、特に卵巣分化に重要な役割を果たすと考えられる。一方、アンドロゲンの役割については現在のところ否定的である。本研究では、エストロゲンの受容体をコードする2種類のcDNAについてもティラピア卵巣から単離することに成功し、その全塩基配列を決定した。このうちの一つはこれまでに報告されていない新規のcDNAで、その発現は卵巣で特に顕著であった。現在、これらのエストロゲン受容体の性分化時での発現を解析中である。 本研究での爬虫類の性決定機構についての共同研究は、特にカメ卵巣からのP450arom遺伝子のクローニングについて集中的になされている。すでに、日本側から提供されたcDNAクローンおよびPCR用プライマーを用いてカメ卵巣からのP450aromのcDNA断片が得られており、現在その全塩基配列の決定についての研究が進行中である。爬虫類の生殖腺の性分化にもエストロゲンが重要な役割を果たすことがあきらかにされつつあり、魚類の場合と合わせ、ステロイド代謝酵素P450aromの生殖腺性分化に果たす役割の分子的解析についての研究の重要性が今後益々高まるであろう。 隠す
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