研究課題/領域番号 |
06044245
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 共同研究 |
研究機関 | 統計研究会 |
研究代表者 |
神谷 克己 財団法人統計研究会, 参与・主任研究員, 名誉教授 (50142055)
神谷 克巳 (1995) (財)統計研究会, 研究員
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研究分担者 |
SUVINAI Porn タマサート大学, 政治学部, 準教授
PRASERT Chit タマサート大学, 政治学部, 準教授
碓井 彊 高崎商科短期大学, 教授 (90223536)
田村 紀之 東京都立大学, 経済学部, 教授 (10086978)
池本 幸生 京都大学, 東南アジア研究センター, 助教授 (20222911)
下村 恭民 埼玉大学, 大学院・政策科学研究科, 教授 (60241923)
PRASERT Chittiwatanapong Associate Professor, Faculty of Political Science, Thammasat University
SUVINAI Pron タマサート大学経済学部, 助教授
西村 謙一 財団法人統計研究会, 研究員 (40237722)
樋泉 克夫 和光大学, 人文学部, 講師
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研究期間 (年度) |
1994 – 1995
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研究課題ステータス |
完了 (1995年度)
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配分額 *注記 |
9,100千円 (直接経費: 9,100千円)
1995年度: 4,600千円 (直接経費: 4,600千円)
1994年度: 4,500千円 (直接経費: 4,500千円)
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キーワード | 経済発展と民主化 / 民主主義 / 権威主義 / 開発主義 / 中間層 / 文民政権 / 所得格差 / 外資 / タイの“5月事件" / 途上国の開発独裁 / 途上国の中間階層 / 民主化勢力の台頭 / 華僑・華人の経済勢力 / 独裁的温情主義 |
研究概要 |
東西冷戦終結後の世界において、特に民主化が重視され、人権の尊重が要請される中で、途上国の経済的側面のみならず、政治的・社会的側面に焦点をおいた実証的研究を進めるのが本研究の目的である。 近年、東アジア諸国の経済はめざましい発展を遂げ、世界の成長センターになっている。このような経済の発展と民主化との間には相互に関連が認められている。しかし、東アジア諸国における民主化のプロセスは一様ではない。それは社会・文化の構造の違いや歴史的要因あるいは国際環境が異なるからである。 経済の発展にともない、社会的多元化が進み、自由化要求が高まり、民主化へ前進した典型的な事例がタイや韓国にみられた。 タイではサリット政権下において、韓国では朴正煕政権が、権威主義的体制の下で、政局の安定を図りつつ、インフラを整備し、国民の教育水準の向上をはかり、国内資本(タイでは華僑・華人資本)を効率的に動員し、外国資本を導入して、経済開発計画を推進した。いわゆる「開発独裁」である。この結果、タイでは経済の離陸に成功し、韓国ではまた「漢江の奇跡」を実現した。 この過程で、両国とも工業化、都市化が進み、これにともなって、ホワイトカラーのサラリーマン、テクノカラート、中小企業の経営者等多数の中間市民層が形成された。それまで、学生・知識人グループが、独裁的な政治体制を批判し、官僚の腐敗を攻撃して、しばしば民主化運動を展開したが、軍部に支援される政府の弾圧に屈する他なかった。ところが、広汎に拡がった中間層が民主化運動に立ち上がったとき、ついに軍人政権は崩壊した。タイにおける1992年の「5月事件」がそれであり、韓国では「光州事件」から盧泰愚前大統領の「民主化宣言」に至る経緯がそれであった。その後、両国民共に文民政権が誕生し、軍人グループの勢力は大きく後退した。軍政から文民政権への移行には流血の惨事という大きな犠牲を支払わねばならなかった。 タイと韓国が軍部・官僚支配型であったのに対して、単一政党支配が長く続いた台湾では、めざましい経済発展を背景に、複数政党による総統の直接選挙を実施し、民主化へさらに前進した。 フィリピンの辿ったプロセスは異なっている。民主主義的な政治体制の国家として認められているフィリピンの経済発展は、他の東アジア諸国に遅れた。その一因はポピュリズム的要素をもつパタ-ナリズムにあった。マルコス政権は戒厳令下に強権政治を行ったが、経済開発は成功しなかった。強権のみあって適切な政策を欠けば、経済目的は達成できないことが分かる。 インドネシアの場合は経済の発展から民主化へのプロセスは立ち遅れている。その一因は、新中間層が政治よりも宗教あるいは社会問題に関心を持っていることにある。シンガポールもその経済水準は既に東アジアのトップクラスであるが、いまだ民主化への動きは顕在化していない。 民主的改革によって、広範な国民の積極的な参加を得、経済発展が推進された典型的な例は戦後の日本であった。例えば、農地改革によって抑圧された農民意識は高まり、農業生産力は飛躍的に増大した。旧地主の根強い反対運動があったが、GHQの「外圧」によって、地主的土地所有は解体された。東アジアでも民主化と経済発展が平行しているが、因果関係を見出すことは必ずしも容易ではない。 以上の通り、本研究では東アジアの国々の経済の発展と民主化へのプロセスが、それぞれの国のおかれている環境条件によって異なっていることを明らかにした。 ミャンマーや中国をはじめ、なお多くの国々で経済と民主化の動向が注目されているが、本研究で明らかにされた東アジアの事例が示唆するところは少なくないであろう。
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