研究課題
国際学術研究
本研究は実質的には、昨年度の同じ分担者による国際共同研究から継続してなされたものである。分担者は、本国際学術研究により、互いの研究を紹介して議論をすると共に、新しい共同研究を展開することができた。分担者に加えて、更に日独の和い研究協力者がお互いの渡航を通じて、研究交流をしたことは、今後のさらなる発展のために大きな効果を持つと期待される。本年度の成果は、出版論文として既に公表されたものも多いが、次年度に出版される予定のものも含まれる。ここではそれらを、(1)1次元系に対する理論、(2)高次元極限における理論、(3)銅酸化物系のモデルとしての2次元系における動力学の研究、(4)その他の系における集団的挙動の研究、に分類して報告する。(1)本研究の主要テーマである1次元凝縮系に対しては、非常に豊富な成果が得られた。まず厳密解に関しては、新たに内部自由度のあるSutherland model(加藤、倉本)、Calogero model(川上、倉本、加藤、Zittartz)の微視的な理論が構築された。t-J modelに対しては、有限温度の帯磁率、電荷感受率、比熱が求められた(倉本、加藤)。また超伝導を示し、厳密解が可能な新しいタイプのモデルが提案された(Zittartz)。その他に、内部自由度のある場合の分数統計、近藤格子に対するボソン化法による研究(川上)、ハバ-ド・モデルの1粒子状態密度の研究(斯波)、相関ホッピングを有するモデルの基底状態相図(Mueller-Hartmann)など、多彩な研究がなされ、分担者間によって詳しい論議がなされた。(2)もう一つの主要テーマである高次元極限の系に対しては、数値的繰り込み群の適用によりハバ-ド・モデルの動力学とモット転移付近の挙動が詳しく調べられた(倉本)。また、無限次元系一般についての解説がなされた(倉本)。不規則性を考慮した無限次元モデルの金属絶縁体転移が議論された(Vollhardt)。またこのモデルをSi:P不純物系に適用して、異常な比熱と帯磁率のふるまいを説明した(Woelfle)。(3)2次元系は高温超伝導体の舞台として重要であるが、低次元と高次元極限との関係は未解決の問題である。t-J模型に格子振動の自由度を加え、実験的に観測されているフォノン異常をRVB描像とslave boson法の平均場近似により説明した(福山)。また、基底状態はフェルミ流体であっても、有限温度では異常な温度と振動数依存性がありえることを、2次元ハバ-ド・モデルの1粒子状態密度の計算から議論した(福山)。内部自由度を持つ超伝導相においては、新しい集団励起モードが現れることを議論した(Woelfle)。また、この相では、系の境界効果に著しい特徴が現れることが指摘された(斯波)。(4)その他の集団的挙動に関する成果として、Haldane磁性体NENPの電子スピン共鳴の実験結果の説明がなされた(斯波)。またハバ-ド・モデルの強磁性については、繰り込み群の考え方を用いた議論が展開された(Mueller-Hartmann)。
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