研究分担者 |
周 左容 慶尚国立大学, 自然科学校, 助教授
成 李みん ソウル国立大学, 教育校, 教授
木村 真 茨城大学, 理学部, 助教授 (20142226)
小島 秀康 国立極地研究所, 隕石資料部門, 助手 (10113896)
矢内 桂三 国立極地研究所, 隕石資料部門, 助教授 (40004494)
海老原 充 東京都立大学, 理学部, 助教授 (10152000)
高岡 宣雄 九州大学, 理学部, 教授 (40028171)
武田 弘 東京大学, 理学系大学院, 教授 (50011523)
JWA Yong-joo Kyon-zoo National Univ., Associate Prof.
LEE Min-sung Seoul National Univ., Professor
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研究概要 |
韓国は、近い将来,南極での隕石採集を意図しており、その準備として,韓国における隕石学・宇宙化学の活性化を図る必要に迫られている。本研究は、日韓科学技術協定に基づいた〔日韓共同隕石研究〕を具体的に実行し、日韓の隕石学の充実を図るためのものである。本研究の第一の目的は,日本と韓国の研究者が共同して,日本の保有する南極産コンドライト隕石の鉱物学的・宇宙化学的研究を行い、原始太陽系の形成過程と隕石母天体の進化過程を解明することである。第二の目的は,南極産各種エコンドライト隕石を用いて、全岩化学組成と構成鉱物化学組成を求め、エコンドライト隕石母天体の成層構造と火成作用を考察することである。 韓国側では,ソウル国立大学の李教授が代表者となり、日韓共同隕石研究討画〔南極産隕石の岩石学的・地球化学的研究〕(総額2000万ウォン)が韓国科学財団に申請され,1994年度に採択された。したがって,韓国側の研究と本研究は,互いに補完関係であり,充実した隕石共同研究が実行された。 本研究の代表者である池田幸雄は,平成6年9月24日から10月11日まで,韓国のソウル国立大学を訪問し,研究分担者である木村真は,平成7年3月2日から3月9日まで,韓国のソウル国立大学と韓国海洋研究所を訪問した。一方,韓国側の代表者である李みん成は,平成6年12月23日から平成7年1月22日まで,日本を訪問し,茨城大学理学部,国立極地研究所隕石資料部門,及び東京大学理学部で共同研究を行った。 本研究を実行するにあたり,日本側及び韓国側研究グループは,国立極地研究所より代表的隕石資料の配分を受けた。資料は,非平衡炭素質コンドライト隕石,非平衡普通コンドライト隕石,平衡普通コンドライト隕石,ハワ-ダイト隕石,ダイオジェナイト隕石,ユ-クライト隕石などであった。 韓国においては,偏光顕微鏡を用いて、隕石の観察を行い,非平衡コンドライト隕石では,コンドリュール,アメ-ボイド・オリビン包有物,石質岩片,鉱物片,及びマトリックスを識別し,岩石学的研究を行った。ハワ-ダイト隕石では,各種のユ-クライト的岩片やダイオジェナイト的岩片を識別し,その衝激作用について研究した。平衡コンドライト隕石では,その岩石組織と結晶度により,変成作用を表わす岩石学的タイプの決定などの研究を行った。 日本においては,とくに,非平衡コンドライト隕石とユ-クライト隕石について,X線マイクロ・アナライサ-を用いて,その構成鉱物の化学分析を行い,それらの隕石の形成条件や進化過程についての研究を行った。やまと8449隕石ではCRコンドライト隕石の加水反応について重点的に考察を行い,コンドリュール中の斜長石質ガラスが層状ケイ酸塩鉱物に変化する反応が原始太陽系星雲中で行なわれたことを解明した。また,CVコンドライトの1つであるやまと86009隕石では,オリピンを重点的に研究し,標準的隕石であるアエンデ隕石中のオリビンと比較・検討した。この結果,やまと86009隕石は,アエンデ隕石よりも還元的環境下で形成されたことが判明した。ポリミクト・ユ-クライトの1つであるやまと75011隕石では,その中に含まれる石質岩片の斜長石とピジョン輝石を分析し,その火成活動について考察した。やまと86009隕石の石質岩片は,母天体の比較的浅所でマグマから形成された表層ユ-クライトの岩石であり,比較的速い冷却速度を持ち,変成作用をほとんど受けていないことが判明した。 本研究の目的の1つは,韓国における隕石学・宇宙化学を活性化することにあった。日本側研究者2名がソウル国立大学を訪問し,韓国側研究者と共同研究を行うと共に,ソウル大学の若い大学院生に講義を行って,彼らの隕石学に対する興味を増大させた効果は,望外の成果であった。
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