研究分担者 |
REEH P.W. エアランゲンニュルンベルグ大学, 生理学部, 教授
HANDWERKER H エアランゲンニュルンベルグ大学, 生理学部, 教授
MESSLINGER K ヴュルツブルグ大学, 生理学部, 講師
SCHMIDT R.F. ヴュルツブルグ大学, 生理学部, 教授
笠井 聖仙 名古屋大学, 環境医学研究所, 助手 (30202005)
佐藤 純 名古屋大学, 環境医学研究所, 助手 (00235350)
水村 和枝 名古屋大学, 環境医学研究所, 助教授 (00109349)
KASAI M. Nagoya University
SATO J. Nagoya University
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研究概要 |
[目的] 急性および慢性の炎症状態時や末梢神経傷害時の痛みの形成には正常では見られない機構が関与していることが明らかにされつつあるが、未解決な部分が多い。末梢の痛覚受容器のひとつであるポリモーダル受容器は急性炎症通と関係が深く、その興奮性は炎症関連物質や組織温度などにより容易に修飾される。さらに近年、末梢神経傷害時や慢性炎症痛においてはポリモーダル受容器活動への交感神経系の影響が明らかとなってきた。しかしながら受容器活動に対する炎症作動物質による修飾様式、受容器における符号変換過程、さらには中枢での他の神経系活動の影響などの詳細は不明である。 これまで痛覚受容器における痛覚情報受容・変換機構は、単一神経線維の細胞外活動電位の放電頻度の変化を指標にして調べられてきたが、受容器自体においては、その微小な構造のため全く知られていない。我々は後根神経節細胞の発痛物質(カプサイシン)に対する反応が、一次求心性C線維で見られたものとよく似ているという結果を得ている。このことは受容器の膜とその細胞体の膜が同じ性質を持ち、細胞体で受容器ので痛覚情報受容・変換機構を解析できることを強く示唆する。そこで、平成6年度は脊髄神経節の初代培養細胞からの細胞内記録(日本側)およびパッチクランプ記録(日独共同)により、炎症作動物質による膜電位変化、膜電流に対する作用を正常動物で調べた。 [実験方法] オスラット(Wistar,80-200g)からL4,L5,L6の両側のDRGを取り出し、Collagenaseで酵素処理(32℃、45〜60分)したのち、CO_2インキュベータ-(5%CO_2,37℃)で培養した。培養液にはDMEM(pH=7.4)を用い、NGF(100ng/ml)を加えた培養と加えない培養を行った。細胞内記録を行なった。実験は35ミリ分離用シャーレを記録用チャンバーとし、哺乳動物末梢神経単離用灌流液をペリスタリックポンプで灌流(1ml/min)しながら行なった。灌流液組成(mM)はHEPES,10;NaCl,150;KCl,5;CaCl_2,2;MgCl_2,1.3;Glucose,10で、100%O_2ガスで飽和し、Tris-bufferでpH=7.4に調整したものを用いた。細胞内記録(電流固定法)とパッチクランプ記録(電圧固定法)はガラス微小電極を用いて、位相差倒立顕微鏡の直視下で行なった。細胞から得られた膜電位,膜抵抗、膜電流のアナログデーターは、ペンレコーダーに記録するとともに、AD変換器でデジタル化しコンピューター解析(Pclamp6.0)を行った。細胞へ薬物の投与は安定した記録を得た後にY-tube法を用いて行なった。カプサイシン(CAP)は痛覚受容器に特異的に作用するといわれているので、細胞の同定はCAP-感受性の有無により調べた。 [結果] (1)24時間以内の培養では、炎症作動物質であるブラジキニン(BK)は、カプサイシン感受性細胞の膜電位、膜抵抗、膜電流に対して特に影響を及ぼさなかった。 (2)48時間以上の培養細胞では、BKはカプサイシン感受性細胞を脱分極させ、その脱分極により多くの細胞は活動電位を発生した。NGFを加えた培養細胞におけるBKによる脱分極は、NGFを加えなかったものと比較して大きかった。 [今後の展望] 現在、BK,PGE_2反応における受容体のタイプや、それらの修飾作用等について実験を進行中である。さらに今後、正常動物と急性および慢性炎症状態の動物とで比較検討することにより、病態時における痛み形成の機構を解明出来るであろう。
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