研究分担者 |
PARK QーHan 慶煕大学, 物理学科, 助教授
SOH Kwang Su ソウル国立大学, 教養部, 教授
NAM Soonkeon 慶煕大学, 物理学科, 助教授
CHUNG Bok Ke 慶煕, 物理学科, 教授
山田 泰彦 九州大学, 理学部, 助教授 (00202383)
小竹 悟 信州大学, 教養部, 講師 (40252051)
石橋 延幸 高エネルギー物理学研究所, 助教授 (70211729)
梁 成吉 筑波大学, 物理学系, 教授 (70201118)
出口 哲生 お茶の水女子大学, 理学部, 助教授 (70227544)
藤川 和男 東京大学, 理学部, 教授 (30013436)
松尾 泰 京都大学, 基礎物理学研究所, 助教授 (50202320)
佐々木 隆 京都大学, 基礎物理学研究所, 助教授 (20154007)
YANG Sung-kil Phys.Dept., Tsukuba Univ.
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研究概要 |
この日韓両国の国際学術共同研究計画には2つの面がある。第1は、日韓の両グループの研究者の間で研究協力・共同研究を通して、研究課題である低次元の場の量子論とその素粒子論及び物性論への応用の研究を進め、下記の具体的な問題に答えを出すことである。もう1つはより長期的で広い意味を持つ。これまで両国の間には、少なくとも理論物理学の分野では、科学者のコミュニティーの間の交流がほとんどなかった。両国のグループで重要な業績があがっている分野で具体的な研究協力を進めることにより、お互いの交流を促進して行く役割も果たしたいという期待がある。主に第1の点について具体的な成果をまとめるが、終わりに、第2の点についても触れる。 素粒子論及び物性論において、重要な物理現象には非摂動的な性格のものが多く、解くことが困難である。低次元に現れる類似な問題では、厳密な取り扱いが可能な場合が多く、これらの問題を解くことが重要な意味を持つ。本研究計画では、低次元の場の量子論における数学的な厳密な方法及びそれに関連した物理的な近似方法の開発を行い、さらに、素粒子物理学及び低次元系の物性物理学のいろいろな問題へ応用することを目的とした。特に次のテーマに重点を置いた。 a)新しい型の可解模型の構成とその応用。 b)可解模型、特に長距離力がある場合の模型に対する新しい数学的な方法の開発。 c)量子重力及び弦理論に対する非摂動論的な方法。 d)素粒子論及び物性理論における超対称性及びアノマリーの役割。 これらのテーマは科研費交付申請書の段階で取り上げられたものである。これらに関して、これまでも日韓の両グループの研究者は互いに独立に、場の理論的及び数理物理学的な視点と方法の研究で、部分的には先端的な業績をあげていた。本研究計画では、両グループの研究者の研究協力を進めることにより、以下のような具体的な問題に答えを出すことを目指した。 1)境界のある可解模型とそれに対応する場の理論の構成。その物性物理学への応用。 2)その他の新しいタイプの可積分な模型の構成。 3)2次元量子重力の非摂動論的な取り扱いの開発。 4)トポロジカル場の理論と弦理論。 5)W_∞及びW_N代数の表現論とその物理の模型への応用。 6)結び目理論の統計力学への応用。 7)低次元におけるQCD及び非線形σ模型などの非摂動的な取り扱い。 8)超対称性やアノマリーの物理系への応用。 1)については、新しい可解模型の構成[10.研究発表の項のリストの8,17]、一般的な考察[18]、近藤問題などの物性物理への応用[20]などで具体的な成果が得られた。又、Calogero-Sutherland模型の境界がある場合への拡張などに関して、日本側(稲見、佐々木)と韓国側(Nam,Park)との研究協力も始まった。 2)については、韓国側のParkとShinの研究をめぐり、稲見と佐々木が議論に加わっている。 5)については、表現論的な研究の段階で新しい結果が得られつつある[11-16,19]。物理の模型との関係でも部分的な成果があった[16]。韓国側(Namとその共同研究者)もこの問題に関連した研究を行っており、日本側の小竹と松尾が研究協力を行いつつある。 3)、4)、6)の研究でも成果があった[9-10;20-24;1-4]が、これらに関しては日本側の寄与が大きかった。 7)の問題については、韓国側(Parkとその共同研究者)が中心となって研究が進められたが、日本側(稲見、[7])も議論に加わった。 8)については、アノマリーを扱う方法論で成果があった[5]。物理への応用は今後の課題である。 まとめると、1)と5)の問題については、短期間で予想外の成果が得られつつあり、密接な研究協力も始まっている。3)、4)、6)の研究も順調に進んでいる。 これまでは、日本と韓国の間の研究者の交流は、主に会議への出席や招待講演を行うことに限られていた。今回の科研費(国際学術研究)の援助を受けた共同研究計画により、日常的なレベルでの研究協力の道が開かれた。実際、佐々木・出口・稲見・小竹の4名はソウルの慶煕大学及びソウル国立大学に3週間程滞在し、日常的な議論、お互いのセミナーを通しての議論、大学院生との接触もできた。佐々木と出口は又韓国の物理学会へも出席し、研究交流の範囲や意味も広がった。これらの研究者間の地道な交流は、将来両国間における科学研究の広い意味での国際協力を促進するのにも役に立つと期待している。
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