研究分担者 |
呂 壽東 大韓民国, 慶北大学枝・師範大学, 教授
小林 進二郎 九州大学, 有機化学基礎研究センター, 助教授 (20037831)
三島 正章 九州大学, 有機化学基礎研究センター, 助教授 (20037279)
藤尾 瑞枝 九州大学, 有機化学基礎研究センター, 助教授 (10029887)
YOH Soo-dong Kyungpook Nat'l University, Teacher's College Professor
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研究概要 |
置換ベンジル置換ベンゼンスルホナ-トと種々の置換ジメチルアニリンとのアセトニトル溶媒中でのMenschutkin反応について速度論的解析を行った。p-MeO-m-Cl体より電子供与活性基質のベンジルトシラートとジメチルアニリンの反応では、アミン濃度に対して2次と0次の2つの反応経路の存在が観測された。求核試材の強さを広範囲に変化させた系の検討からもS_N2経路に独立なS_N1経路の存在が確実となった。また、^<13>C-^<18>0二重ラベルベンジルトシラートを合成し、^<13>C-NMRを用いて原系トシラートにおける^<18>Oスクランブリングをアセトニトリル中で観測した。スクランブリングの速度はS_N1経路よりかなり大きく、S_N1経路はソルボリシスと同様に2種のイオン対が介在する逐次多階段イオン機構であることが明らかになった。S_N1経路の置換基効果は、ソルボリシスのS_N1機構と同程度の負に大きいρ値(-6)と大きな共鳴要求度r=1.3で特徴づけられた。S_N2経路の置換基効果はルーズからタイトへの遷移状態の連続的変動に対応してσ^+(r=1.00)に対してカーブ相関を与え、S_N1、S_N2両反応機構の遷移状態構造の違いと独立性が明確になった。同様の解析を置換ベンジルブロミドについても行った。ベンジル基質の置換基効果は、σ^+の二次式で表されるカーブ相関を与え、機構変動が観測された。その接線から得られたρ_z値はp-MeOからm-NO_2へ変えると-1.56から-0.26まで変化し、遷移状態における反応中心炭素上の正電荷の減少がみられた。ρ_z値の変動はベンジルトシラート(p-MeS体:-2.08,m-NO_2体:-0.68)の場合より小さく、求核剤と脱離基の距離が短い、つまりよりタイトな遷移状態構造でS_N2機構変動が起こっていることが明らかになった。一方、求核剤の置換基効果はZが電子求引性置換基になると負に大きくなり、遷移状態におけるC-N結合形成の度合いが大きくなることを示した。従って、Zが電子求引基になるにつれて律速遷移状態で求核剤とベンジル炭素の結合形成の進行が反応中心炭素上の正電荷の減少をもたらすと考えるとベンジル系の求核置換反応の機構変動を合理的に解釈できる。 S_N1ソルボリシスの中間体カチオンの本質的特性とソルボリシス遷移状態構造との関連性
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を解明する目的で、気相におけるα,α-ジアルキルベンジルカチオンの共鳴要求度を決定した。α,α-ジアルキルベンジルカチオンの熱力学的安定性はフーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴法を使用して対応するオレフィンの気相塩基性度の測定に基づいて求めた。α,α-置換基をMe,Me、Me,Et、Et,Et基へと変化させてもその安定性には大きい変化はなく、共鳴要求度もα-クミルカチオンの1.0に等しいことが明らかになった。一方α-置換基がt-Bu,Meの系では母体カチオンの安定性の低下とともに、共鳴要求度減少が観測された。この結果は、ベンジルカチオンが平面構造を保つ限り、α,α-ジアルキルベンジルカチオンの共鳴要求度は1.00近似でき、共鳴要求度がベンジル位炭素とベンゼン間の共鳴相互作用の度合いを表す真のパラメータであることを支持する決定的な証拠となった。さらに、一連のベンジルカチオンの最安定構造をab initioMO計算から求めた。得られた構造のベンジル位sp^2炭素平面とベンセセン環平面の2面角は共鳴要求度からの計算値(r/r_o=cos^2θ)に完全に一致した。 ソルボリシス条件下でレーザーフラッシュフォトリシス法を用いて炭素陽イオンと求核剤(溶媒)との反応反応速度を測定した。求核剤としてエタノールを含むアセトニトリル中において種々のa-P-メトキシフェニルビニルブロミドにレーザー光を照射したところ、対応するビニルカチオンが生成し、現有の装置で追跡できるだけの寿命があることが明らかになった。そこで、β位にMe_2;Et_2:Me,Et;Me,Ph;Ph_2;C_3H_6;C_4H_8;C_5H_<10>置換基を有するα-p-メトキシフェニルビニルブロミドが生成するビニルカチオンへのエタノールの求核反応速度を測定した。それぞれのビニルカチオンに対して8.35,1.63,5.14,1.38,5.08,96.1,21.8,7.64x10^6s^<‐1>M^<-1>の求核反応速度定数が得られた。β位置換基による求核反応速度の変動にはビニルカチオンの安定性とともに求核剤の攻撃の際の立体障害が重要であると考えられる。事実、ビニルカチオンの安定性に差異がないβ-アルキル置換基の効果はTaftのEsパラメータで相関されるが、C_3H_6およびC_4H_8置換体の速度増大はEs相関に一致しない。これは環のひずみの効果が重要であることを示唆しているものと思われ、今後の検討が必要である。 隠す
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