研究課題/領域番号 |
06044269
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
長田 義仁 北海道大学, 理学部, 教授 (60007804)
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研究分担者 |
ジェロニミディス ジョー レディング大学(英国), シニアレクチャー
ヴィンセント ジュリアン レディング大学(英国), シニアレクチャー
安永 秀計 北海道大学, 理学部, 助手 (80241298)
ぐん 剣萍 北海道大学, 理学部, 助教授 (20250417)
JERONIMIDIS George Center for Biomimetics University of Reading Senior Lecturer
GONG J.p. Faculty of Sciences, Hokkaido University Associate Professor
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研究期間 (年度) |
1994
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研究課題ステータス |
完了 (1994年度)
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キーワード | 傾斜材料 / 高分子ゲル / アクチュエーター / プラズマ重合 / スチレンプラズマ重合膜 / ナフィオン膜 / 湿度センサー / 生物模倣 |
研究概要 |
本共同研究のねらいは生体の駆動システムの優れた機能を合成材料を用いて模倣し、生体模倣駆動システムの実現を目指そうとするものである。本年度は、ビンセント博士の提唱した植物運動システムの原理にもとづき、申請者から、膜厚方向にスルホン酸基の密度の異なる傾斜膜を作製することを試みた。まず、スルホン酸基を有するナフィオン膜上に、様々なプラズマ重合条件でスチレンプラズマ重合膜を堆積させ、二層膜を作製した。この膜について外部の環境を変化させたときの変形挙動を検討したところ、膜の屈曲の程度が湿度に対して再現性よく変化することを見い出した。また、その屈曲挙動をレーザー変位計を用いることによりμmオーダーで測定し、その応答性を検討した。 (1)複合膜の作製 ナフィオン膜を乾燥させた状態で、片面にスチレンのプラズマ重合膜を堆積させた。プラズマ重合条件は、プラズマ出力50W、真空度0.4mbar、重合時間5〜60分で行った。作製したプラズマ重合膜は表面平滑で、黄褐色であった。 (2)外部環境を変化させたときの変形挙動 この膜を湿度の異なる恒湿槽におき、変形挙動を測定した。 (I)恒湿槽の作製 硫酸を用いて恒湿槽を作製した、まず一定の濃度の硫酸溶液を、ガラスシャーレに入れ容器の底の方におき、ゴムパッキンの付いた蓋をして容器を密封した。次に容器内の空気を小型扇風機によって攪拌し、約2時間放置した。これで湿度は一定となった。この方法で硫酸の濃度を変化させることにより種々の湿度を有する恒湿槽を作製した。 (II)屈曲挙動の測定法、傾斜膜の屈曲挙動はレーザー式変位計を用いて測定した。半導体レーザーから放出されたレーザー光によって測定物に光点を作り、この光点の像をレンズによってPSD(位置検出素子)に形成させ、測定物の変位を測定した。今回用いた装置の分解能は0.05mmである。恒湿槽内の湿度はセラミック抵抗式デジタル温湿計(CTH-70)を用いて測定した。 (III)傾斜膜の変形挙動 硫酸によって恒湿状態にした膜を2時間放置し、屈曲の程度が一定になったときの変位を測定した。膜が屈曲すると半導体レーザーによって生じた光点がセンサーに対して垂直に移動し、その変位を測定した。この変位(屈曲の程度)と湿度の関係が図1である。図に示すように湿度25%以下の状態ではほとんど膜は屈曲しないが、湿度が上昇するにつれて膜は屈曲した。湿度変化に対する膜の変位の割合いは、湿度約40〜60%で大きく、40%以下、60%以上では小さくなった。図2に湿度を31%の状態から48%の状態に変化させたときの傾斜膜と応答特性を示す。湿度変化とともに速やかに応答し、変位の値が一定になるまでには約30分要した。比較としてセラミック式センサーの応答特性を測定した結果、約10分で一定の値を示した。このような応答挙動の違いは、セラミック式センサーが金属酸化物表面上に水が吸着することによる抵抗値変化を測定しているのに対して、傾斜膜の場合、傾斜膜に対する水の浸透による膨潤変化を測定しているためと考えられる。つまり、金属酸化物の水の吸着と傾斜膜の水の浸透の速度差が応答特性に影響していると考えられる。
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