慢性状態の患者および家族のストレス・コーピングに関する共同研究

• 研究課題/領域番号: 06045008
• 研究種目: 国際学術研究
• 配分区分: 補助金
• 応募区分: 大学協力
• 研究機関: 千葉大学
• 研究代表者: 兼松 百合子 千葉大学, 看護学部, 教授 (20091671)
• 研究分担者: BOOTH Rachel アラバマ大学バーミングハム校, 看護学部, 教授 学部長 ; GASKINS Susa アラバマ大学タスカルーサ校, 看護学部, 助教授 ; 丸 光恵 (中島 光恵) 千葉大学, 看護学部, 助手 (50241980) ; 工藤 美子 千葉大学, 看護学部, 助手 (40234455) ; 内田 雅代 千葉大学, 看護学部, 助手 (70125938) ; 古谷 佳由理 千葉大学, 看護学部, 助手 (90222877) ; 湯浅 美千代 千葉大学, 看護学部, 助手 (70237494) ; 山本 由香 千葉大学, 看護学部, 助手 (20272338) ; OLIVET Linda アラバマ大学タスカルーサ校, 看護学部, 準教授 ; HENSON Anne アラバマ大学バーミングハム校, 看護学部, 準教授 ; 佐藤 弘美 千葉大学, 看護学部, 助手 (80199603) ; 佐藤 まゆみ 千葉大学, 看護学部, 助手 (10251191) ; 水野 照美 千葉大学, 看護学部, 助手 (90261932) ; 小澤 桂子 千葉大学, 看護学部, 助手 (80261931) ; 正木 治恵 千葉大学, 看護学部, 講師 (90190339) ; 武田 淳子 千葉大学, 看護学部, 講師 (50157450) ; 井上 智子 千葉大学, 看護学部, 助教授 (20151615) ; 佐藤 禮子 (佐藤 れい子) 千葉大学, 看護学部, 教授 (90132240) ; 斉藤 和子 千葉大学, 看護学部, 教授 (70106219) ; 野口 美和子 千葉大学, 看護学部, 教授 (10070682) ; PAUL Penelop アラバマ大学バーミングハム校, 看護学部, 準教授 ; HOLCOME Judy アラバマ大学バーミングハム校, 看護学部, 準教授 ; HORRIS Madel アラバマ大学バーミングハム校, 看護学部, 助教授 ; SHEITON Mitc アラバマ大学タスカルーサ校, 看護学部, 助教授 ; KELTNER Bett アラバマ大学バーミングハム校, 看護学部, 教授 ; WRIGHT Penny アラバマ大学バーミングハム校, 看護学部, 教授 ; DASHIFF Caro アラバマ大学バーミングハム校, 看護学部, 教授 ; NOVAK Debra アラバマ大学タスカルーサ校, 看護学部, 助教授 ; NAMBAYAN Ayd アラバマ大学バーミングハム校, 看護学部, 助教授 ; CROW Carolyn アラバマ大学タスカルーサ校, 看護学部, 助教授 ; HARUE Masaki Chiba University Bette, Keltner・UAB・ ; 黒田 久美子 千葉大学, 看護学部, 助手 (20241979) ; HOLCOMBE Jud アラバマ大学, バーミングハム校・看護学部, 助教授 ; HARRIS Madel アラバマ大学, バーミングハム校・看護学部, 助教授 ; SHELTON Mitc アラバマ大学, タスカルーサ校・看護学部, 助教授 ; SKIPWITH Del アラバマ大学, バーミングハム校・看護学部, 教授
• 研究期間 (年度): 1994 – 1995
• 研究課題ステータス: 完了 (1995年度)
• 配分額: 4,200千円 (直接経費: 4,200千円); 1995年度: 2,000千円 (直接経費: 2,000千円); 1994年度: 2,200千円 (直接経費: 2,200千円)
• キーワード: 痴呆性老人 / 家族介護者 / ストレス / がん患者 / 対処行動 / 慢性疾患患児の母親 / 育児ストレス / 異文化比較 / 痴呆老人 / ソーシャルサポート

研究概要

本研究は、痴呆性老人、がん患者、慢性疾患や障害をもつ小児等、慢性状態の患者および家族のストレスと対処について、千葉県と米国アラバマ州において調査し、その結果の比較分析により両国の看護婦が異文化の状況の中に自国の看護の充実への示唆を見出すことを目的としたものである。3つの分野について次のように実施した。
(1)痴呆性老人の家族介護者のストレスならびに影響要因について、平成6年度に日米共同で質問紙を作成し、平成7年度に両国それぞれの家族介護者58名ずつの家庭を訪問し調査を実施した。1995年9月にアラバマ大学の研究者を訪ねて、両国の粗データを提供しながらデータの分析方法の検討を行った。その過程で質的データの設定の仕方や国際比較分析の問題点等が明らかになり、1996年2月に両国のデータを合わせて統一したデータ分析方法に基づいて分析を行った。両国で比較分析した内容は、(1)介護者の負担感に影響する痴呆性老人の問題行動、(2)介護者の負担感のレベル、(3)痴呆性老人の問題行動と介護者の負担感との相関、(4)痴呆性老人の問題行動・介護者の性・介護者の属性・介護者のソーシャルサポートのレベルの間の関係、などである。その結果、痴呆性老人とその家族介護者の属性や痴呆性老人の介護の決定プロセスに両国の相違がみられた。また、両国共に痴呆性老人の問題行動と介護者の負担感に相関がみられた。
(2)がん患者と家族に関しては、カナダで開発されたCoping Inventory for Stressful Situations (CLSS)を用いて日米両国で調査した。わが国では平成6年度にCISS日本語版を用いて千葉県内の病院に入院中の手術を受けるがん患者103名につき対処行動を調査した。平成7年度はその集計ならびに対象患者の退院後3か月を目処とした退院後調査を郵送により行い、63名からの回答を得た。術前との比較では、CISS総得点には差は見られなかった。また退院3か月後のデータをもとに、年齢、性別、術式、職業の有無、宗教の有無によるCISS総得点の差と、術前期間、術後期間、入院期間、家族員数とCISS総得点との相関を分析したが、有意差や有意な相関は見られなかった。また、これらの結果を健常者と比較するために、わが国の20歳以上の健常者約300名に対し全国規模でのCISS調査を行い、比較検討を行っている。米国における調査はCISSデータ収集中であり、わが国の結果とつき合わせることで最終的な成果を導く予定である。
(3)小児の分野においては、平成6年度に両国の3〜24か月の慢性疾患患児の母親38名ずつの育児ストレスと家族の状況を調査した。育児ストレスの調査には、AbidinのParenting Stress Index (PSI)を用い、日本語版PSIは研究者らが作成した。わが国の調査は、病院の母親38名とそれに年齢、性、出生順位をマッチさせた健康児の母親38名に対しても行い、自作の質問紙によるソーシャルサポートの調査を全対象に加えて行った。日米比較では、育児ストレスは子どもの側面も親の側面もアメリカの母親の方が日本の母親より有意に高かった。13の下位尺度のうち差が見られなかったのは、子どもの多動性によるストレス、親の拘束感、育児の自信のなさ、の3つのみであった。この差が生じる理由として、対象となった母親の年齢と教育背景の差、調査時の子どもの病状の差、医療費と医療保険制度の違いなどが考察された。日本の病児の母親と健康児の母親の育児ストレスは、子どもの側面において病児の母親のほうが有意に高く、子どもの状態を受容できない、わずらわしい、適応性に欠ける、親を喜ばせることが少ないの4下位尺度で差が見られた。育児ストレスの総点は対象児の出生順位が低いほど高かった。ソーシャルサポートは病児の母親において健康児の母親よりも有意に高く、病児の母親では育児の自信のなさ、親の拘束感、夫との関係においてソーシャルサポートとストレスの間に負の相関が見られた。日本語版PSIを千葉県、宮城県、岩手県の0〜3歳の健康児の母親1114名について実施し、78項目(原版101項目)15下位尺度(原版13下位尺度)の日本語版PSIを作成した。
以上のように3分野において大学間協力研究を進めてきたが、両者の合意により方法を決定し、調査・分析し結論を得ることは2年間では困難であり、次年度に持ち越される部分がある。

研究成果

• [文献書誌] Turner-Henson,A.,Heladay,B.,Kanematsu,Y.,Maru,M,Nakamura,M.: "Stress experienced by mothers of young chronically-ill children : A cross-cultural comparison" JANS 2nd International Nursing Research Conference Proceedings. 142 (1995)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(和文)」より
• [文献書誌] Nakashima,M.,Kanematsu,Y.,Nakamura,M.,Kudo,Y.,Takeda,J.,Uchida,M.,Furuya,K.: "Deferminants of stress experienced by Japanese mothors of young chronically-ill Children : The comparison with healthy children" JANS 2nd International Nursing Research Conference Proceedings. 144-145 (1995)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(和文)」より
• [文献書誌] 中村美保,兼松百合子,丸光恵,工藤美子,武田淳子,内田雅代,古谷佳由理,白畑花子: "日本版Parenting Stress Index (PSI)の信頼性・妥当性の検討" 日本看護科学会誌. 15(3). 43 (1995)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(和文)」より
• [文献書誌] 正木治恵他: "痴呆性老人の家族介護者のストレスならびに影響要因" 第2回日本老年看護学会. (予定). (1996)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(和文)」より
• [文献書誌] Turner-Henson, A., Holaday, B., Kanematsu, Y., Maru, M., & Nakamura, M.: "Stress experienced by mothers of young chronically-ill children : A cross-cultural comparison" JANS 2nd International Nursing Research Conference Proceedings. 142 (1995)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(欧文)」より
• [文献書誌] Nakashima, M., Kanematsu, Y., Nakamura, M., Kudo, Y., Takeda, J., Uchida, M., & Furuya, K.: "Determinants of stress experienced by Japanese mothers of young chronically-ill children : The comparison with healthy children" JANS 2nd International Nursing Research Conference Proceedings. 144-145 (1995)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(欧文)」より
• [文献書誌] Nakamura, M., Kanematsu, Y., Maru, M., Kudo, Y., Takeda, J., Uchida, M., Furuya, K.& Shirahata, N.: "Reliability and validity of the Japanese Version of Parenting Stress Index (PSI)" Journal of Japan Academy of Nursing Science. 15 (3). 43 (1995)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(欧文)」より
• [文献書誌] Masaki, H.et al.: "Stress and effective variables of family caregivers of demented elders" 2nd Japanese Gerontological Nursing Conference. (in press). (1996)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(欧文)」より
• [文献書誌] M.Nakashima,Y.Kanematsu,J.Takeda et al.: "determinants of Stress Experienced by Mothers of Young Chronically-Ill Children." Proceedings of the 2nd International Nursing Research Conference. (予定). (1995)
• [文献書誌] A.Turner-Henson,Y.Kanematsu,M.Nakashima et al.: "Stress Experienced by Mothers of Young Chronically Ill Children: A Cross-Cultural Comparison" Proceedings of the 2nd International Nursing Research Conference. (予定). (1995)