研究課題/領域番号 |
06045022
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 大学協力 |
研究機関 | 京都工芸繊維大学 |
研究代表者 |
福西 興至 京都工芸繊維大学, 工芸学部, 教授 (40027800)
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研究分担者 |
BURKINSHAW S 連合王国, リーズ大学・色素化学および染色学科, 助教授
LEWIS D.M 連合王国, リーズ大学・色素化学および染色学科, 教授
佐藤 哲也 京都工芸繊維大学, 工芸学部, 助手 (20252546)
浦川 宏 京都工芸繊維大学, 工芸学部, 講師 (10183211)
老田 達生 京都工芸繊維大学, 工芸学部, 助教授 (90152032)
三木 定雄 京都工芸繊維大学, 工芸学部, 助教授 (30135537)
上田 充夫 京都工芸繊維大学, 工芸学部, 助教授 (20243123)
梶原 莞爾 京都工芸繊維大学, 工芸学部, 教授 (10133133)
LEWIS D.M. 連合王国, リーズ大学・色素化学および染色学料, 教授
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研究期間 (年度) |
1994 – 1996
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研究課題ステータス |
完了 (1996年度)
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配分額 *注記 |
4,300千円 (直接経費: 4,300千円)
1996年度: 1,400千円 (直接経費: 1,400千円)
1995年度: 1,500千円 (直接経費: 1,500千円)
1994年度: 1,400千円 (直接経費: 1,400千円)
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キーワード | 紫外線 / 電子線 / 低温プラズマ / スパッター / 繊維 / 染色 / 堅牢度 / プリント / グロー放電 / スパッタエッチング / セルロース / 染色性 / 吸尽率 / 環境 / スパッターエッチング / 羊毛 |
研究概要 |
紫外線、電子線、低温プラズマ、スパッターエッチングなどの高エネルギー処理による高分子材料の改質は医療高分子などの分野を中心にすでに実用化段階にあるが、繊維加工への応用にはまだ多くの検討課題が残されている。本研究は、最近急速に発展してきたレーザー技術、電子技術、プラズマ処理技術などを背景に、これらを繊維加工、あるいは染色に応用し、繊維の特性をこれらの技術によって改質し、染色性、あるいは堅牢性の向上、さらにはこれらの技術の応用によって従来に無い新規な染色法を確立することを目的として展開した。 紫外線、低温プラズマ、スパッターエッチングなどの高エネルギー処理を施した繊維高分子材料は、その処理部位に物理化学的な改変が起こり、結果としてその後の染色過程において色素の収着性が変化する。このような現象を利用すれば、繊維高分子の改質のみならず、染色性あるいは堅牢性の向上、さらには、特定の部位のみに高エネルギー処理を施し、その後に単一色素で染色することで、プリントなどの複雑な過程を経ずに、色素の収着性の変化を利用した濃淡柄の染色が可能となる。 本研究では、3年間にわたって、連合王国リ-ズ大学との協同で、高エネルギー処理による繊維高分子の物理的および化学的変化の解析、高分子の微細構造の変化の解析、高エネルギー処理とくに電磁波処理の場合の物理的あるいは化学的変化を増感する物質の解析、処理後の繊維高分子の色素の収着性の変化の解析、処理後の染色繊維の色彩変化、染色繊維の堅牢性の検討など、多岐に渡る検討を加えてきた。 検討の結果、高エネルギー処理による繊維高分子への作用には、主として電磁波あるいは電離活性線による繊維高分子の表面酸化および部分非結晶化などの効果が認められた。このような基質の変化が、引き続く染色過程の色素親和性の増大あるいは減少、堅牢性や色彩の変化に寄与しているものであると推定できた。 高エネルギー処理にともなう繊維の色素親和性の変化の機構に関して、高分子物理化学、有機合成化学、染色化学、色彩科学の方面から詳細な検討を加えた結果、XPS分析、ζポテンシャル測定、小角X線散乱測定などにより、高エネルギー処理による繊維高分子基質の表面化学特性の変化と表面電位の変化が色素の親和性の大きな影響を与えていることが判明した。 繊維高分子基質としてセルロースを用いた場合、高エネルギー処理によってセルロースは化学酸化を受け、セルロース用に分子設計された色素で染色すると、未処理のセルロースと比較して顕著な色素親和性の低下が認められた。処理後のセルロースは基質中の水酸基がアルデヒドに酸化され、さらにはカルボキシル基に至ることがわかった。セルロース用の色素は一般にアニオン性のものが用いられるが、基質にカルボキシル基が生成すると、その静電的な反発で親和性が低下することが予測できる。このことは、処理後のセルロースが未処理のものと比べて低い親和性をもつことと矛盾しない。しかしながら、化学的な解析の結果、アルデヒドが多く生成する条件でも親和性が低下することが認められ、処理による親和性の低下は、一概には静電的な作用のみに帰着することは困難で、むしろ繊維基質の構造改変にともなう色素との水素結合、ファンデアワールス結合力の低下が主原因であろうと推定した。 このような高エネルギー処理技術を用いると、走査紫外線ーザーなどで二次元的に模様をもたせて処理したセルロース布帛は、その後の単一な一浴染色の工程を経ることで、複雑なプリント工程と同様の濃淡模様をもった染色物を得ることが可能である。ポリエステルあるいはナイロンなどの合成繊維、さらには羊毛、絹などの動物性天然繊維についても、原則的には同様の現象が認められ、この技術は多くの繊維基質に適応可能であることが判明した。 現在の染色技術では、無地染色の場合は色素の自然拡散を利用した浸染が主流で、柄染色の場合はスクリーンやローラーなどを利用して二次元的に色素の収着をコントロールする方法が用いられている。いずれの場合も、加熱と長時間の保温が必要であり、多くのエネルギーと水を消費する工業である。本研究で得た高エネルギー処理を用いる方法はドライな環境で行え、かつプリントのような複雑な装置を必要としないので、今後、繊維工業化学技術与える貢献はきわめて大きい。
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