研究分担者 |
プラシット タラビチクル チェンマイ大学, 付属病院・中央検査部, 助教授
チラ シリサンタナ チェンマイ大学, 医学部, 学部長
真崎 宏則 長崎大学, 熱帯医学研究所, 助手 (40244058)
小林 忍 長崎大学, 医学部・付属病院, 助手 (10274656)
秋山 盛登司 長崎大学, 医学部・付属病院, 助手 (50244067)
渡辺 貴和雄 長崎大学, 熱帯医学研究所, 助手 (20220874)
大石 和徳 長崎大学, 医学部・付属病院, 講師 (80160414)
力富 直人 長崎大学, 熱帯医学研究所, 助教授 (70175032)
PRASIT Tharavichitkul Department of Microbiology, Chiag Mai University
アジマ ブンチョウ チェンマイ大学, 付属病院中央検査部, 主任
プラシット タラヴィチク チェンマイ大学, 付属病院中央検査部, 助教授
苑田 文成 長崎大学, 医学部付属病院, 助手 (50264239)
田尾 操 長崎大学, 熱帯医学研究所, 助手 (80187913)
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配分額 *注記 |
5,400千円 (直接経費: 5,400千円)
1996年度: 1,800千円 (直接経費: 1,800千円)
1995年度: 1,700千円 (直接経費: 1,700千円)
1994年度: 1,900千円 (直接経費: 1,900千円)
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研究概要 |
我々は1994年4月より「タイ国における急性呼吸器感染症治療法の研究」というテーマで3年間、チェンマイ大学との大学間協定に基づき研究を行ってきた。初年度はタイ国における急性呼吸器感染症の起炎菌の決定および現行の抗菌化学療法の評価、さらに病原細菌の薬剤耐性について研究を行った。メソッド総合病院におけるARIの診断は急性気管支炎が最も多く45.3%で、次いで肺炎の10.3%であった。起炎菌ではH.influenzae,S.pneumoniaeの2菌種で全体の70%を占め、次いでM.catarrhalis,K.pneumoniaeであった。外来治療はペニシリン系抗生物質で80%を占め、テトラサイクリンを第一選択薬とする場合も認められた。薬剤感受性結果では、テトラサイクリン耐性のH.influenzae、ペニシリン耐性のS.pneumoniaeやM.catarrhalisが注目すべき薬剤耐性菌として明らかとなった。 2年度は初年度の結果を踏まえ、市中肺炎に焦点を当て、起炎菌検索がより確実にできるようにチェンマイ市内のナコンピン病院で研究を行った。対象は平成8年1月の約1ヵ月間に入院した男性27名、女性5名の計32名である。平均年齢は男性37.9歳、女性50.6歳であった。HIV検査が施行された男性25名のうち17名(68%)、女性4名のうち2名(50%)がHIV陽性であった。陽性患者は20代、30代に高い割合であった。32症例のうち、21症例に起炎菌が検出され、単独菌感染ではK.pneumoniaeが3例と最も多く、以下S.aureus、P.aeruginosaが2例などで、複数菌感染では、結核菌と一般細菌の混合感染が3例と最も多く、次いでH.influenzaeとK.pneumoniaeの混合感染が2例であった。初期治療として約半数に2系統以上の薬剤が使用されていた。なお、薬剤感受性では、通常ナコンピン病院で最も多く使用されているペニシリンGは、H.influenzaeとS.aureusに対しMIC0.39μg/dlで、K.pneumoniaeに対しては50μg/dlであった。ゲンタマイシンは、H.influenzaeに対しMIC0.39〜0.78μg/dlで、K.pneumoniaeに対してはMIC3.13μg/dlで良好ではなかった。一方、シプロフロキサシンは、H.influenzaeに対しMIC0.006μg/dl、K.pneumoniaeに対してはMIC0.025μg/dlと極めて良好であった。また、臨床効果もペニシリンGとゲンタマイシンの併用療法で8例中2例が有効で、有効率は25%と低いものであった。また、シプロフロキサシンの一日の使用コストは55バ-ツで、ゲンタマイシンの一日の使用コスト68バ-ツより安価であった。そこで我々は、ペニシリンGとシプロフロキサシンの併用による治療の有用性を確立するために、この治療法を推奨し実施することとした。 3年目の平成8年度は、以下のプロトコールで研究を進めることとした。 市中肺炎で入院した患者のうち、軽症肺炎にはペニシリンG、中等症あるいは軽症肺炎にはペニシリンGとゲンタマイシンの併用療法かペニシリンGとシプロフロキサシンの併用療法を選択することとした。軽症肺炎とは、胸写において一葉の範囲以下の浸潤影、中等症ないし重症肺炎はその範囲以上の浸潤影とし、体温、呼吸数、全身状態、検査値などを参考にして決定した。 1997年1月から2月にかけてチェンマイ市ナコンピン病院を受診し肺炎にて入院した患者は男性12名、女性7名の計19名であった。平均年齢は44.2歳、基礎疾患としては、心不全、糖尿病、貧血が各2例でその他喘息や大腸癌などであった。治療経過中および細菌性肺炎でない症例を除外し、14症例について検討した。なお、男性2例、女性2例はHIV陽性であった。起炎菌としては、S.pneumoniae、S.aureus、Corynebacteium属が2例ずつ、H.influenzae、P.aeruginosaが各1例などであった。今回我々は、治療前の喀痰採取に留意したので、S.pneumoniaeを同定できた。治療としてペニシリンGが単独で3例に、ペニシリンGとゲンタマイシンの併用が2例、ペニシリンGとシプロフロキサシンの併用が8例で、その他1例であった。 その他を除く各々の有効率は0%、50%、100%で、ペニシリンGとシプロフロキサシンの併用による有効率は極めて高かった。症例数が十分ではないので、今後症例を重ねペニシリンGとシプロフロキサシンの有用性を確認し、WHOおよびタイ国に提言する予定である。
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