研究課題/領域番号 |
06045054
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 大学協力 |
研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
田沼 靖一 東京理科大学, 理学部, 教授 (10142449)
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研究分担者 |
ZANNETTA Jea ルイパストゥール大学, 教授
ZANETTA Jean ルイ, パスツール大学・神経科学研究所, 教授
青木 一正 東京理科大学, 薬学部, 助手 (10184029)
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研究期間 (年度) |
1994 – 1996
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研究課題ステータス |
完了 (1996年度)
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配分額 *注記 |
5,800千円 (直接経費: 5,800千円)
1996年度: 1,800千円 (直接経費: 1,800千円)
1995年度: 1,900千円 (直接経費: 1,900千円)
1994年度: 2,100千円 (直接経費: 2,100千円)
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キーワード | アポトーシス / DNA断片化 / DNAエンドヌクレアーゼ / DNaseγ / 細胞死 / エンドヌクレアーゼ / 神経細胞死 / 神経変性疾患 / 多発性硬化症 / 胸腺細胞 |
研究概要 |
アポトーシスの実行過程では、DNAの断片化を中心とする核の断片化やアポトーシス小体の形成と言った共通の現象がみられる。このことは多様な死の情報カスケードは最終的にはある1つの共通経路に収束することを示唆している。すなわち、アポトーシスには、共通の自死装置があると考えられる。この自死装置の中心に位置するのがDNAを切断するエンドヌクレアーゼである。本研究では、このアポトーシス・エンドヌクレアーゼに焦点を絞り、その構造と機能を解明することを目的とする。 ラット及びウシ胸線細胞核には、CM5PWHPLCで分離される3種のエンドヌクレアーゼが存在することを見出し、DNaseα、β、γと命名した。ウシ胸線細胞にX線を照射した後、経時的に細胞を採集、核内のDNase活性の変動を調べたところ、DNaseαとβはアポトーシスに伴い速やかに減少するのに対して、DNaseγはアポトーシスを起こした核に保持されていた。そこで、正常なラット胸線細胞からDNaseαとβを、アポトーシスを誘発させたそれからDNaseγを、種々のカラムクロマトグラフィーを用いて精製をおこなった。完全精製したDNaseの標品を用いてその性質を詳細に検討した。DNaseαとβは共に、分子量32kDaの2価陽イオン非依存性の酸性エンドヌクレアーゼであった。一方DNaseγは分子量33kDaの中性エンドヌクレアーゼであった。その活性には、Ca^<2+>とMg^<2+>の両者を必要とした。また、Zn^<2+>に高感受性を示し、IC50は40μMであった。 さらに、DNAK切断様式をDNA末端標識性により解析した。DNAの酵素的切断様式には、3'-OH/5'-P型と、3'-P/5'-OH型の2つがある。前者の場合は、アルカリホスファターゼによる前処理の有無にかかわらず、ターミナルデオキシヌクレオチジルトタンスフェラーゼ(TdT)と[α^<32>P]dCTPにより3'末端を標識することができる。しかし、ポリヌクレオチドキナーゼと[γ^<32>P]ATPによる5'末端の標識は、アルカリホスファターゼの前処理を行って末端のリン酸基をはずしておかないと起こらない。逆に、後者の場合は、末端標識が起こらないのは、アルカリホスファターゼ未処理の3'末端標識のときである。実際に、HeLa細胞核とDNaseα、β、γをインキュベートした後に、D
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NAを調製し、上述の末端標識を行った後に、アガロースゲル電気泳動にかけ、オートラジオグラフィーにより解析すると、図5に示すように、αとβはいずれも3'-P/5'-OH型であることが判明した。しかし、DNaseγは3'-OH/5'-P型であった。そこで次に、アポトーシスを起こした細胞の断片化DNAの末端がどのようになっているかについて、同様の末端標識法を用いて解析した。放射線照射やデキサメサゾン処理によってアポトーシスを誘発させたラット胸線細胞では、DNA切断様式は、いずれも3'-OH/5'-P型であり、DNaseγの切断様式と一致していた。 DNaseγの精製標品をリシルエンドペプチダーゼ、又はアルパルティックエンドペプチダーゼで処理し、得られたペプチドをHPLCにより分取し、気相アミノ酸シークエンサーによってそれらの部分アミノ酸配列を決定した。これらの部分アミノ酸配列を基にプローブを作製し、ラット胸線cDNAライブラリー(λgtll)よりクローニングを行ない、その全塩基配列を決定した。このcDNAの解析から、DNaseγ遺伝子のオープンリーディングフレーム(ORF)は933塩基より成り、予想されるアミノ酸配列(310アミノ酸残基)から、DNaseγはN末端にプリカーサーペプチド(25アミノ酸残基)を有することがわかった。又、興味深いことに、このプリカーサー領域にはロイジンジッパーが存在していた。一方、N末端及びC末端には、核移動シグナルを表す塩基性アミノ酸のクラスターが存在していた。DNase活性を担う活性中心は内部に存在し、しかもDNaseIに類似しいてることが判明した。 私共がラット及びウシ胸線細胞から精製したDNaseγは、分子量が33kDaのCa^<2+>/Mg^<2+>依存性のエンドヌクレアーゼで上述のエンドヌクレアーゼとは異なる新規なものであった。また、その遺伝子構造もこれまでに報告されていない新規なものであった。DNaseγの酵素学的性質、特に、Ca^<2+>要求性とZn^<2+>に高感受性であることと、アポトーシスの際に細胞内Ca^<2+>濃度の上昇がみられることや、細胞内にZn^<2+>を添加することによってアポトーシスが阻害される知見を考えるとアポトーシスのDNA断片化はDNaseγによって触媒されている可能性が高い。さらに、DNaseγによるDNAの切断様式が3'-OH/5'-P型であり、アポトーシスを起こしたラット胸線細胞の断片化したDNAの末端(3'-OH/5'-P)と一致していくことを考え合わせるとγタイプのDNaseがアポトーシスのエンドヌクレアーゼであると結論される。 本研究において、アポトーシスの顕著な特徴であるDNAのヌクレオソーム単位での断片化を司るエンドヌクレアーゼを世界で初めて同定し、完全精製することができた。さらにDNaseγのcDNAクローニングにも世界で初めて成功し、その全塩基配列を決定しタンパク質の一次構造を明らかにすることができた。これらの成果は、DNaseγの遺伝子発現、及び活性化機構を解明する上で重要な手掛りとなる知見である。また、ここを足場として、アポトーシスの実行過程の分子メカニズムを解明する突破口となる成果である。 隠す
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