研究課題/領域番号 |
06045055
|
研究種目 |
国際学術研究
|
配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 大学協力 |
研究機関 | 立教大学 |
研究代表者 |
白石 典義 立教大学, 社会学部, 助教授 (60171039)
|
研究分担者 |
王 処輝 南開大学, 社会学部, 教授
劉 くんくん 南開大学, 社会学部, 教授
笠原 清志 立教大学, 社会学部, 教授 (80185743)
|
研究期間 (年度) |
1994 – 1996
|
研究課題ステータス |
完了 (1996年度)
|
配分額 *注記 |
5,400千円 (直接経費: 5,400千円)
1996年度: 1,700千円 (直接経費: 1,700千円)
1995年度: 1,800千円 (直接経費: 1,800千円)
1994年度: 1,900千円 (直接経費: 1,900千円)
|
キーワード | 日中文化摩擦 / 日中文化葛藤 / 中国進出日系企業 / 日本人派遣要員 / 中国人従業員 / 異文化接触 / 日本人管理職 / 中国腎従業員 |
研究概要 |
本調査研究は、中国進出日系企業における日本人派遣要員と中国人従業員との間のコンフリクトやトラブルの実態を把握し、これを解消あるいは軽減することによって日本企業と現地社会との円滑な関係を醸成することに貢献することを目的としている。 中国に所在する多くの日系企業は、「中国の市場」や「労働コストの低廉さ」に着目して進出している。特に、後者に目的を置いて進出した企業にとっては、従業員としての中国人の思考様式や行動様式が、職場や仕事の場面に出ることが多いから、人事・労務管理上、問題は絶えなかった。これが、現在も続いている、と言える。 例えば、中国人従業員との間のトラブルの主なものは、「仕事の指示・命令」や「仕事の仕方・進め方」、「職場規律」等であり、仕事関連のものが多い。 そして、このようなトラブルが生じる背景として、日本人管理職は「仕事に対する考え方の違い」や「中国社会の習慣・慣行の違い」を高い割合であげている。 一方、日本人管理職は、日系企業で働く中国人従業員の思考や行動の中で、特徴的なこととして、「お金に対する執着心」、「仕事上の責任転嫁」、「人前で注意されることの嫌悪意識」、「研修で得た知識や技術の私有意識」、「協働意識の希薄さ」、「仕事への取り組みの希薄さ」等を高い割合であげている。また、かれらの思考や行動の中で、経営人事の側面で困っていることとしても、同様のことをあげている。 このようなマイナス要因は、職場規律を遵守するための職場規程や仕事を円滑かつスムーズに進行させるための業務規程等で対応できるものもあるが、対応できないものも多い。対応できないものは、中国人従業員との人間関係やコミュニケーションを密にすることによって補うことになる。実際の場面では、日本人管理職は、「誰にも公平に接する」、「信頼する」、「プライドや誇りを傷つけない」、「中国社会の習慣や慣行を理解する」、「思いやりを持って接する」ことに心がけており、これらが人間関係やコミュニケーションを密にするために重要なことと位置づけている。 この点に関しては、中国人従業員も『望ましい上司像』として、日本人管理職が心がけていることと同様な内容を指摘している。 以上の諸点から、日本人管理職と中国人従業員との間に生じるトラブルを解消あるいは軽減するための手掛かりとして、次のような点を指摘することができる。 一つは、職場規律を遵守するための職場規程や仕事を円滑かつスムーズに進行させるための業務規程等、いわゆる、会社、職場、業務に関するルールを、中国式の思考様式や行動様式を考慮に入れて再構築することである。この点については、各社とも、すでに運用されているものがあると考えられるが、これは、中国人従業員の納得がいくようなものにするための挑戦であり、ルールを遵守させるための説得材料でもある。 二つは、この各種規程の運用である。調査でも明らかにされたように、日本人管理職と中国人従業員との間には、「仕事の指示・命令」、「仕事の仕方・進め方」、「職場規律」を巡るトラブルが多い。そして、多くの日本人管理職は、このトラブルの背景に「仕事に対する考え方の違い」や「中国社会の習慣・慣行の違い」があるとしているが、実は、規程の理解が不足していることや、規程の運用の仕方、規程の運用者に問題があるものと考えられる。 運用者たる日本人管理職が中国人従業員に信頼され、規程が的確に運用されているかが問題である。管理者として信頼されるには、先ず、従業員から理解されることであり、そのために、人間関係、コミュニケーションを密にすることが有効な手段になる。 人間関係を良好にする、コミュニケーションを密にする、ということは、トラブルを解消する、あるいは軽減する直接的な方法ではないことを認識しておく必要がある。 最適な方法は、中国人従業員にとっても、納得のいくルールづくりであり、納得のいく運用である、と言える。
|