本研究の主な課題は次の3点にあった。(1)現代倫理学から見た化学技術観、(2)コンピュータ・エシックス資料の分析、(3)現行の倫理綱領の内容調査。本研究は、単年度の申請ではあるものの、過去4年間、共同研究を分担して(第5群第4班)、上記の課題を一貫して追及した。それゆえ、以下、平成3年度から6年度に至る研究概要を記すことにしたい。(研究成果は年度ごとの論文や発表として残された) 平成3年度は、、現代倫理学から見たテクノロジー観の確認(1)とコンピュータ・エシックス資料の分析(2)という二つの具体的課題を追及した。 平成4年度は、前年度の研究をいっそう精緻にすることが目指された。たとえば、(1)に関する研究は、H.ヨーナスの環境倫理や脳死臨調報告の分析というかたちで考察し、(2)の課題は、「非同期性(=非共時性)」をめぐるコミュニケーション・メディアの問題を検討することで追及した。この年度は、(3)の課題をも追及しつつ、さらに前年度の方針に技術論と身体論の観点を加えた研究方向を目指したが、とりわけ身体論的アプローチからは得るところが多かった。 平成5年度も、前年度の方向を堅持して、技術と身体との関わりをとりわけ時間という視点からアプローチし直した。情報化と深い関係にある変容の徴候として時間性を無視しえなかったからであり、さらには時間の視点を離れた変容という事態が考えられれなかったからである。 平成6年度の研究は、それまでの研究成果を第5群全体のテーマである「分化変容」という問題にどのように組み入れるかという課題のみに絞って行われた。「情報化にともなうモラルの変容」という枠組みで研究をまとめる方向を探ったが、現在それを論文のかたちにまとめる作業に入っている。 以上、4年間の共同研究を支えていただいたことに感謝したい。
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