本年度は、研究課題に関するこれまで2年間の研究を踏まえ、研究の最終取りまとめを行った。これまで主としてオーストラリアの外交史料・文献に基づき、オーストラリアのアジア太平洋諸国との二国間外交に焦点を当てて研究を行ってきたが、本年度はこれに加え、アジア太平洋という「地域」に焦点をあてたオーストラリア外交の展開とその背景を跡づける作業を行った。具体的には、50年代半ば以降、特に60年代に入ってからオーストラリアの中で活発に議論されることになる「地域協力」の問題、そして、地域協力を推進する上での日豪関係の発展の経緯と意義を検討してきた。これは今日注目を浴びているAPEC(アジア太平洋経済協力会議)の設立に連なる問題であり、今日的意義も大きい。 この間、米国に史料調査に出かけ、国立公文書館で関連資料を収集したほか、国内の専門家からの史料提供も受け、従来空白であった研究課題の解明に努めた。また、この過程で研究報告会を開催し、専門家の意見を聴取した。 本研究の成果の一部は雑誌・書物において既に公表したほか、学会でも報告した。現在取りまとめ中の最終成果は二つの部分からなる。第一は、1943年頃から始まるオーストラリアの対日戦後構想作りから60年代初頭までの対日政策の展開を、オーストラリアのアジア太平洋外交の流れの中で論じた部分であり、平成7年度中に出版すべく、出版者と現在協議中である。また、第二部は、今回の研究を通じて明らかになったオーストラリアのアジア太平洋外交、特に地域協力の分野でのオーストラリアの外交(および日豪協力の進展)を踏まえて、「アジア太平洋の地域協力」に関する部分であり、出版者との打ち合せも終わり、平成7年夏に出版すべく、現在原稿執筆の最終段階である。
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