研究概要 |
前年度の研究で,本手法の原理的可能性はすでに確かめられていたので,本年度は作業効率と分解能の向上をめざして周波数を前年度の13.56MHzから40.67MHzに変えて実験を行った. まず,やや深い探査対象として,近世城郭の堀の底部の探査実験を行うこととし,滋賀県高島町の大溝城と安土町の安土城で実験を行った.その結果,地中の不連続面は二三検出されたものの,両地点とも地下水面が高かったため,電磁波の地中貫入深度が不十分であった.とくに,安土城では埋め立て地上の人口地盤で,電磁波が表層内に閉じ込められて深部に透過できない現象がみられた. 次に,もう一つのやや深い対象として,大型古墳の石室の探査実験を,大阪府高槻市の今城塚古墳で行った.その結果,7および8メートルからの反射が見られ,石室の底部および古墳建設前の原地盤面と推定された.また,かつて石室があったと推測されるあたりで電磁波の反射が乱れ,同石室は既に盗掘されており,土がゆるんでいるものと推定された. さらに,同種の対象として,福岡県八女市の岩戸山古墳で実験を行った.その結果,後円部の地下4および7メートルから明瞭な反射が確認され、石室の頂部と底部からの反射と推測された.これらの結果は,本手法が,古墳などやや深い対象の探査手法として十分な可能性をもつことを示すものである。
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