研究概要 |
視覚探索の心理学的な研究は盛んになされ,様々な特性が明らかになっている.しかし,その神経機構は現在まで解明されていない.鳥類では網膜への遠心性投射系(向網膜系)が発達している.現在まで報告者らが明らかにした解剖学的,生理学的知見(文献参照)をもとにすると,鳥類の向網膜系は並列でしかもも独立した約1万個のモジュールで構成されていると見做すことができる.一つのモジュールは,視野のある限局した部位を調節する.仮に活発に活動しているモジュールが順に移動していくと仮定すると,網膜の出力(神経節細胞の活動)を局所的に且つ一時的に増強し,しかも増強する部位を移動させることができる.仮に向網膜系が「注意の向かう」対象のある位置に相当する網膜の部位の出力を増強するとしたら,Treismanらによって提唱された「注意のスポットライト」のモデルを実現する神経機構といえる. この向網膜系が本当に視覚探索に関与しているかは行動実験によって確かめなければならない.今年度はそのための実験システムの一部を構築した.システム全体として刺激画像を提示して,標的図形をpeckさせる方式をとる.システム構成としては刺激提示部,反応計測部,報酬制御部からなり,全体はパーソナルコンピュータ(IBM PS/V Master)で制御される.刺激画像はコンピュータにインストールした画像合成ボード(Cambridge Research System社製VSG2/3)とソフトウェアによって合成し,SVGAモニターに提示する.動物の反応(peckの位置,反応潜時)はモニター前面に装着したアナログ静電容量方式のタッチスクリーン(MicroTouch社製HyperTouch)によって検出する.来年度以降このようなシステムを用いて,向網膜系の除去が動物の視覚探索の能力にどのように影響するかを調べる.
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