研究概要 |
大規模な法律知識ベースを構築した場合,情報源の分散性と構築作業の並列性を考えると,実用化段階では知識ベースの一元管理は困難である。本研究は,分散法律知識ベースを構築する際に生ずる諸問題に対して,特に法律知識ベースサーバ等のソースの状態把握とそれに基づいた検索要求の配送先決定に関して検討している。しかも法律知識ベースはオープンな広域ネットワークを介して接続されるため,他のシステムへのトラフィック等の面で負担をかけずかつ他のシステムからの影響に関して安定した方法が不可欠である。本研究では,検索要求と検索結果に現在の状態情報を付加した双方向ピギ-バックに基づく方法を考察した。この方法では、知識ベース情報を検索要求・結果に付与して配布し,分散配置された要求配送器はこれによって現在の環境の近似値を得,サーバ機種・通信遅延・ジョブ特性を考慮してジョブを配送する。本手法は,異機種サーバが混在する状況においても利用できる点に特徴がある。また,高負荷時に有効であることを明らかにし,その理由をピギ-バック情報の信頼性から解析した。さらに,本方式のプロトタイプを静岡大学と金沢大学で実装し,広域ネットワークでは遅延が大きく変動するため有効な負荷分散が必ずしも行えないことがわかった。これに対し,遅延を予測する手法として遅延分布をア-ラン分布の重ね合わせで近似し,遅延の状態を高・中・低に分類し,これをマルコフ連鎖並びに線形法によって予測する方法を開発した。約60%のヒット率で予測が行えるがまだ十分とは言えない。また,他サーバの情報をより的確に知るために,配送器が知っている他サーバの情報をあわせて配送する選択的多重ピギ-バック方式を検討した。その結果,送るべき情報の選択基準として配送ホップ数を用いることが有効であることを明らかにした。また,自律分散方式に関しては,セグメント化されたネットワークにおいてノード間遅延や処理能力が不均一な場合に関する検討を行い,負荷を適切に分散可能であることを明らかにした。
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