エキスパートシステムが実用的であるためには、現実世界とのリファレンスの問題を解決しなくてはならない。CBR(事例にもとづく推論)の難かしさは、それが類推、類似性のコンピュータ表現を必要とすることにある。 この問題の自然な解決法は、似た事例を比較することである。我々に現実の事例がただひとつしかあらわれていないとしても、理論的には、例題や仮説的事案や教科書の設例と比較することができる。しかし、実例が少なければ少ないほど比較は困難となる。CiSG判例は最初の100件ほどが知られているが、そのなかで真に興味深いケースは実に少ない。jurisの検索を通じて、今年度は「電話」に関する判例にヒットし、その話題が、重点領域研究を活気づけたといっても過言ではない。それを通じてデータベースからの法知識獲得と、他の情報との関係がかなり明らかになった。ドイツのGutachtenstilやローマ古典法の法的推論の市民法的伝統についても見通しをえることができた。
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