研究概要 |
今年度は,後期になって新たに電子顕微鏡が導入されたため,それによる微粒子の観察,分析環境を整備することを優先せざるを得なかった。そのため,惑星間塵よりも比較的試料も多く,また取り扱いやすい炭素質コンドライトの研究に重点を置いた。 1.始原的微粒子と水との反応を調べる目的で,変成作用を最も受けていないアエンデCV3隕石を水熱変成実験にかけ,組織・化学組成の変化を電子顕微鏡で調べた。これは彗星内での変成作用にも関係して問題である。隕石内の特定の鉱物が,数種類の層状ケイ酸塩に変化していることがわかり,隕石で見られるような様々な水質変成の組織が観察された。現在,実験条件を変えて生成鉱物,および化学組成の変化を追跡しているところである。 2.3つのCOタイプ炭素質コンドライトのCAIを調べ,隕石ごとにCAI中のネフェリンの存在量が大きく異なることを見出した。そして,ネフェリンの存在量は,CO隕石の熱変成度と良い一致を示すことがわかった。これまで,CAI中のネフェリンは低温になった原始星雲ガスとの反応で形成されたと考えられてきた。しかし,今回の研究は,ネフェリンの形成は,隕石母天体集積後に起こった熱変成作用に関係している。可能性が高いことを示唆している。 CVタイプ炭素質コンドライト中のDark inclusion(DI)の電子顕微鏡による観察,分析を行ない,変成作用を示す新たな証拠,データを見出した。今回の結果は,DIの母天体では大規模な水質変成が起こり,その後,水の枯渇によって熱変成に転じ,層状ケイ酸塩が脱水・転移したことを示している。これは,これまでのDIの成因に関する定説をくつがえす全く新しい解釈である。
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