研究概要 |
音楽を聴いた時に感じる印象は人によってさまざまである.これは、人がそれぞれの潜在意識の中に音楽に対するモデルを持っているからである.本研究では,そのようなモデルを機械学習の手法によって獲得することにより,目的とする印象を喚起するような編曲を自動的に行う手法を開発した. まず,様々な楽曲に対する被験者の評価を基に,被験者が感じた特徴を帰納学習により抽出し、コードのつながりに注目することによって,感性モデルを構成する.それを用いて,指定された感性に訴えるものへと他曲を編曲し,被験者に提示した.感性に対する刺激の度合を編曲後の曲と元の曲とについて比較・検討とした結果,全体の流れが重要である「安定度」および「嗜好度」については編曲前後での改善の度合が低かったが,全体の流れに左右されにくい「明るさ」については改善の度合いが高かった.以上により,機械学習の手法が感性情報の抽出及び創造に有効であることが確かめられた. さらに,感性の曖昧さに対応する学習手法として,グラフリダクションを応用した手法を提案した.これはニューラルネットワークで用いられているような重みの学習を行うが,グラフの書換えを動的に行うことにより,学習対象が命題論理から述語論理に拡張されている.従来の機械学習法では,曖昧な概念を扱いにくいため,感性情報処理との親和性が低いと見られてきたが,この手法により,そのような垣根を取り除くことができた.
|