アメリカと日本で放映されているテレビ・コ-シャルを素材として、各国ごとに、音楽表現と映像表現の関係について、林の数量化理論第3類による統計的分析を試みた。その結果、音楽表現と映像表現の組合せは、日米とも、「力強さ-日常性」、「おとなしさ」、「日常性」、「非日常性」を表す表現様式である。これらの表現様式に用いられている音楽、映像表現は、日米間で共通するものが多く、「どのような映像と音楽を組み合わせるのか」に関しては、日米とも同じ様な方策に基づいて決定されていることが示唆される。 このことは、日米のデータを一まとめにして林の数量化理論第3類によって分析した結果、1軸-2軸平面上、カテゴリーとしての日本とアメリカの布置がほぼ一致することからも確認できる。また、この分析によって得られた3軸-4軸平面において、アメリカのコマーシャルは知性に訴えかけ、日本のコマーシャルは感性に訴えかけるものであることが示唆された。そして、アメリカのコマーシャルを特徴づける表現様式として、アット・ホームさと論理性があげられ、音楽表現には、アフロ、ラテン系分化の影響が強いことが示された。日本のコマーシャルの音楽的特徴は、短調、コーラス、クラシックがあげられた。 さらに、音楽表現要素と映像表現要素の各カテゴリーが組み合わされる同時確率をもとに、要素間のエントロピーの分析を試みた。その結果、音楽表現要素のうち、「調性」と「楽器編成」が映像表現要素との従属性が強く、これらの要素が、音楽と映像の表現を結び付ける役割を担っているものと考えられる。
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