研究概要 |
本研究は血流がどのように血管の構築を変えるのか,ラット・家兎の総頚動脈を使用し,動静脈吻合による血流変化を用いた実験により明らかにした.[方法]ラット,家兎の総頚動脈を用いた.左総頚動脈に頚静脈と内吻合を作成し血流負荷を行った.実験計画は次の3つである.1)負荷後1時間から30週まで形態学的検討を行った.2)バルーンカテーテルにより内皮剥離を行った後内吻合を作成し血流負荷を行い形態学的に検討した.3)家兎総頚動脈において内吻合を作成し血流負荷を行った後4週で内吻合を閉じ血流負荷をもとにもどした.5ないし6週後屠殺し光顕的及び電顕的に検討した.これを2回繰り返したものと,3回繰り返したものを作成し同様に形態学的に検討した.[結果]1)12時間を過ぎると内皮細胞は活発化し,3日で内皮細胞の増殖をみた.3日には内皮細胞の基底膜側細胞膜にしばしば楔型の突出部が認められ,しばしば内弾性板に直接侵入していた.大きく長い突出は時に内弾性板を貫き中膜に達していた.7日には明らかな内弾性板の離開が見られ,その部位の中膜平滑筋細胞の走行の乱れを認めた.4週では離開はさらに著しくなり,中膜平滑筋細胞の走行の乱れと肥大と増殖を認め,内径は拡大し改築はほぼ完成した.その後30週まで内径は血流とバランスをとりながら拡大し,中膜は壁張力を補う様に改築を示した.2)内皮細胞を剥離するとこれら血流による動脈改築は生じなかった.3)血流負荷の増減により動脈に内膜肥厚を作成することができた.[考察]内皮細胞は血流負荷後3日で内弾性板を破り,7日でさらにその部分を広げ,それにつれて中膜平滑筋細胞の再構築が生じていることがわかった.したがって血流による動脈拡大は血流により活性化した内皮細胞による動脈改築であると考えられた.
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