研究概要 |
小動物を用いた脊椎症モデルの開発を行った.傍脊柱筋を剥離,棘突起と棘間靱帯の切離を行ったマウスでは脊椎症変化が早期に生じることは判明しているが,さらに効果的に脊椎症を発症するように一椎間のみ可動性を残し,他の椎間は固定したマウスを作成している.これらの動物モデル群での力学的特性を振動特性測定器を用いて調べた.機械技術研究所で開発したBiomechanical Spectrometerを用いて,56週の雄ICRマウスの頚胸椎部を取り出しC3-T1間の動的粘弾性を測定した.これをコントロールとし,傍脊柱筋を剥離,棘突起と棘間靱帯の切離を行ったマウスの脊柱をモデル1,一椎間(C5/6)のみ可動性を残したマウスの脊柱をモデル2とした.粘弾性測定は静的引っ張り荷重80gを加え,そこに周波数11Hz,35Hzで動的引張荷重25gを加重させ変位応答を測定した.荷重F=F_θ+F_1sinWtに対する変位D=D_θ+F_1sin(Wt-D)による動的こわさ並びに位相差tanδを調べた.本実験では各椎間の動きを測定しているわけではないので,その構造全体としての力学的特性をしらべるということになるが,コントロールでは11Hz,35Hzで,それぞれtanδは0.16,0.18,動的こわさは35.5N,31.6N,モデル1ではtanδは0.15,0.17,動的こわさは34.8N,29.7N,モデル2ではtanδは0.25,0.25,動的こわさは143.9N,164.3Nであった.すなわちモデル1における脊柱不安定は筋系による不安定性であって,モデル2は構造的な力学特性の違いがある.本モデルを用いて椎間板の劣化や反応性と思われる骨増殖における生物学的反応系をあきらかにしたい.現在,軟骨や骨に関与する促進系のサイトカインであるIGF-I,IGF-II,bFGF,TGF-B,BMPや抑制系のIL-1,TNF-A,IL-6の発現を調査中である.
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