研究概要 |
将来の高温材料として期待されていながら,その粒界脆性のために開発が遅れている代表的な金属間化合物のNi_3Al多結晶体に対して,Bのような第三元素を添加することなく,材料に含まれる粒界の性格およびその分布(いわゆる,粒界性格分布),粒界の幾何学的配置を設計・制御することにより,粒界脆性が制御しうることが本研究によって確かめられた.Bを含まないNi_3Al(化学量論組成Ni-25at.%Al合金)に対して,帯溶融法を用いた一方向凝固によって作製した多結晶試料.さらにこれを常温圧延加工および焼鈍再結晶させた多結晶試料の力学的特徴と粒界性格分布との関係を調べた.その結果,一方向凝固のままの試料が50%以上の優れた常温延性を示すのに対し,一度常温加工すると延性が急激に低下し,その後の焼鈍再結晶によっても決して脆性が改善されないことが明らかにされた.このような力学的挙動は,一方向凝固試料,加工焼鈍試料の粒界性格分布とよく対応しており,粒界破壊抵抗の大意気低エネルギー粒界の頻度が一方向凝固試料で80%以上になるのに対し,加工後の焼鈍によって急激に低下すること,また粒界クラツクの伝播を阻止しうる低エネルギーのI型粒界三重線の頻度が低エネルギー粒界の頻度低下に伴って低下することによると結論される.本研究の成果は,脆性多結晶材料の粒界脆性制御の基本的原理を与えるものである。
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