研究概要 |
1500℃を越える超高温においても優れた耐酸化性を示すMoSi_2は,500℃程度の低温で粒界から酸化して,粉化するペスト現象を起こす.本年度はペスト現象の原因を明らかにするために,MoSi_2及びMo(Si,Al)_2を試料として研究を行った。ペストの進行の程度は酸化増量を目安にした.MoSi_2およびMo(Si,Al)_2ともに約500℃でもっともペストが激しい.Mo(Si,Al)_2との場合の酸化増量は,MoSi_2の場合に比べて,1/40まで低下しており,添加したAlがペストを大幅に抑制している.この結果から,ペストの原因を考察した.Mo-Si系の金属間化合物の標準生成エネルギーから各相におけるMoとSiの活量を求め,それぞれとMoO_2とSiO_2との平衡酸素分圧を計算した結果,MoSi_2の粒界ではSiのみが酸化しSiO_2を生成することがわかる.このときの体積増加は約85%である.また,Mo(Si,Al)_2中のAlの活量は用いた試料の組成が,Al融体と共存する組成に近いことから,ほぼ1と考えられ,Alのみが酸化してAl_2O_3を生成する.このときの体積増加は約11%となり,MoSi_2の場合に比べて小さい.ペストは粒界にこれらの酸化物が生成する際に発生する応力により,亀裂が生じ,そこからさらに深く酸化が進行することにより加速的に酸化が起こるものと考えられる.粒界近傍の機械的性質に関する研究を加えることにより,ペストの機構を明らかにすることができる.
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