研究概要 |
1.遷移金属酸化物CuO,NiO,CoO,FeO,MnO,TiO_2の3d電子状態と遷移元素原子2p内殻励起3d,3p,3s共鳴電子放出スペクトル(PES)の関係を電子間多重極相互作用を取り入れた遷移元素原子1個を含むクラスター模型に基づいて理論的に調べた。酸素イオンから遷移元素イオンヘ電子を移動させるのに必要なエネルギーを△、3d電子間の有効相互作用をUとする。CuO,NiOでは、△<U(電荷移動型絶縁体)であるのに対し、CoOでは△〜U,FeO,MnOでは△>Uであることを示した。またTiO_2では、Tiイオンと酸素間の有効移行積分がUや△と同程度に大きいため、Tiの3d状態は、3d^0と3d^1L配置(Lは酸素2p軌道のホールを表す)の強い結合状態にあることを示した。この事が、非共鳴下と共鳴下の3dPES及び3pPESに直接反映されることを示した。 2.銅酸化物について、より大きいクラスターCu_2O_7,Cu_2O_8に対し1)ドープしない場合、2)ホールを1個ドープした場合、3)電子を1個ドープした場合のそれぞれについて、3dPESと3d逆光電子放出を計算した。この系について知られているパラメータ値を用いることにより、1)ドープしない系の「バンドギャップ」は1.9eV程度であること、2)Zhang-Rice (ZR)singletの移行積分がO.4eV程度であること、3)ホールをドープした系の「バンドギャップ」は0.7eV程度であるが、フェルミレベルに最も近いPES終状態はZR singletが2個動けない状態にあり、上記移行積分0.4eVを考慮すると、この系は金属的であると見なせることを示した。
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