研究概要 |
最近、La_<-x>Sr_xCuO_4の高温領域で輸送特性(電気抵抗、ホール係数)が異常を示すことが報告され、高温での正常金属的な状態から低温での異常金属相への移り変わりが起こっているのではないかということが指摘されている。我々は、今まであまり注意の払われなかったxの非常に小さいところまでの高温での電気抵抗、熱起電力および電気抵抗のCuサイト置換効果を調べた。電気抵抗は〜600K付近でその傾きを変え、その折れ曲がりはxが小さくなるほど顕著になるが、〜600K以上での傾きはxにあまり依らない。熱起電力も高温ではその傾きはxにあまり依らないが、xの小さいところでは〜600K以下では明らかな増大が見られる。これは〜600K以下で非弾性散乱が大きくなることを示していると考えられる。電気抵抗、ホール係数、帯磁率などの結果を合わせ考え、2つのキャリアがスピン一重項対(歪み等と結合し重くなっていると考える)を形成し、これによって自由なキャリアが散乱されるのではないかと考えている。Cuサイト置換効果はZn,Ni,Co,Ga,Al,Feについて調べたが、Zn置換の場合だけが他の場合とは非常に異なるという結果を得た。Zn置換の場合だけ正常状態での異常なふるまいが抑えられるという結果である。電気抵抗の〜600K付近での折れ曲がりが、Zn置換によって消えていく。ホール係数はZn置換により大きいフェルミ面に相当する小さい値に収束するように見える。熱起電力は以前報告したように、Zn置換により異常なふるまいが抑えられ、正常な金属で期待されるようなふるまいに近づく。電子比熱係数γは、Ni置換の場合超伝導の消える濃度でのγはLoramらによる正常状態での値まで回復するのに対し、Zn置換の場合はずっと大きく、xを小さくすると増大していくかのようなふるまいが見られる。このようなふるまいは、Zn置換により、一重項対、あるいはCuスピンの反強磁性相関がZnの近傍で壊されると考えれば、理解できるように思われる。Cuサイト置換効果に関しては、置換により引き起こされる局所的な格子歪の効果も重要であると思われる。
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