研究課題/領域番号 |
06218202
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研究種目 |
重点領域研究
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
吉田 宏 北海道大学, 工学部, 教授 (20027410)
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研究分担者 |
市川 恒樹 北海道大学, 工学部, 助教授 (10001942)
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研究期間 (年度) |
1994
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研究課題ステータス |
完了 (1994年度)
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配分額 *注記 |
1,900千円 (直接経費: 1,900千円)
1994年度: 1,900千円 (直接経費: 1,900千円)
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キーワード | トリメチレンメタン / 三重項分子 / 電子スピンエコー / 磁気緩和 / 双極子相互作用 / 放射線化学 |
研究概要 |
基底三重項分子トリメチレンメタン(TMM)の磁気緩和挙動を電子スピンエコー(ESE)法で明らかにすることを目的とした。有機磁性体は、概念的には不対電子を担うスピン部分とそれらを強磁性的に結ぶ結合部分とから構成される。スピン部分の一つの典型である基底三重項分子TMMを取り上げて、有機磁性体設計に不可欠の磁気緩和機構を解明した。 メチレンシクロプロパン(MCP)結晶を77Kでγ線照射すると、三員環開裂により高効率でTMMが生成する。高照射線量で収量は飽和するが、1040kGy照射においては40mmol/kgに達した。TMMは近隣プロトンによる強い核変調効果を示した。横緩和はexp(-kτ^2)に従い、TMM濃度の増大により早くなり、プロトンのflip-flopに基づく局所磁場変動、近傍電子スピンが作る双極子磁場の搖動やスピン拡散による機構による。縦緩和はexp(-kT^<0.5>-1.01x10^<-5>T)に従い、スペクトル位置に依存し、TMM濃度とともに早くなる。濃度に依存する縦緩和は交差緩和機構により起こるものと考えられる。 三重項分子間の磁気相極子相互作用は二重項ラジカルに較べると8/3倍大きいことになるので、電子スピン間の相互作用が緩和に寄与する場合には、三重項の磁気緩和は早くなる。実際、1mmol・dm^<-3>程度以上のTMM濃度においては、縦緩和は励起TMMから近傍のTMMへの交差緩和が主たる機構となる。TMM濃度を極度に高めた場合にTMM間にどのような相互作用が見られるかに興味を持ち高線量照射を行ったが、特別な磁気的相互作用は見られなかった。高線量照射では、近傍に生成した二つのTMMがカップリング反応により消滅し反磁性生成物となるため、TMM生成の効率は低下する。濃度を増加する方法では、双極子-双極子相互作用以外のスピン相互作用が現れるには至らなかった。高スピン磁性体実現には結合部分の適切な設計が必須である。
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