研究概要 |
1.スチルベン誘導体のカチオンラジカルを経る光誘起異性化における磁場効果 電子受容性増感剤存在下の(Z)-スチルベンの光異性化の効率が増感剤の多重度に依存し,三重項のイオンラジカル対の生成が異性化に重要であることを磁場効果を利用した手法を用いて明らかにした.さらに,9,10-ジシアノアントラセン(DCA)を増感剤とする(Z)-4,4'-ジハロスチルベン((Z)-X_2St)のアセトニトリル中の異性化効率を種々の磁場中で測定し,ハロゲン原子の異性化に対する効果と異性化の磁場効果に対する影響を調べた.超微細相互作用の大きいF原子の存在が磁場効果を増大させるのに対し,重原子のBr原子は超微細相互作用を相殺する効果があることを見出した. 2.スチルベン誘導体カチオンラジカルの励起状態における異性化 DCA/ビフェニルの共増感系のレーザーホトリシスにより,アセトニトリル中,室温で(Z)-4,4'-ジクロロスチルベン((Z)-Cl_2St)のカチオンラジカルを発生させると,過渡吸収が測定できる時間領域では,(Z)-Cl_2St^+から(E)-Cl_2St^+への異性化は観測されない.しかし,最初のレーザーパルスにより(Z)-Cl_2St^+を生成させ,その1〜2μs後に第2のレーザーにより(Z)-Cl_2St^+の高い励起状態を生成させると(二波長励起),直ちに(E)-Cl_2St^+が生成することを見出した.同様の二波長励起で(E)-Cl_2St^+は(Z)-Cl_2St^+へ異性化せず,励起状態での異性化はZ→Eの片道である.また,第2のレーザーとしてCl_2St^+の第一励起状態を生成させる波長のパルスを照射しても片道異性化が観測された.F_2StおよびH_2Stカチオンラジカルも励起状態で同様の挙動を示した.
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