吸着量の関数として吸着水の磁場応答性を調べたところ、一般に、第一層の水は磁場に応答せず、多分子層吸着水のみが層数にほぼ比例して応答した。しかし、疎水性表面上で弱く吸着した第一層の水は明らかに磁場応答する。また、スリット上細孔中の水はその細孔径に依存して磁場応答性を変えた。 磁気吸着の磁場強度依存性は固体の種類によって3パターンに分類できた:実験した磁場強度範囲(<1T)で磁気吸着する(1)、磁気脱着する(2)、低磁場で脱着し、ある閾値以上で吸着に転ずる(3)。常磁性NOの磁気吸着の磁場強度依存性はパターン1および2に包含される。パターン3の逆(吸着-脱着転移)を示す系の有無に興味がある。 ベンゼンーカーボンブラック系を手始めに有機物-固体系の磁気吸着は、ベンゼンやアルコールでパターン1を示した。また、77KでのO_2およびN_2の磁気吸着を調べるための装置を制作して同様に調べたところ、やはりパターン1を示した。 磁気吸着のメカニズムの検討のために、磁気吸着現象を分子吸着に伴う磁化の変化によって説明しうるかを検討した。吸着水の磁化率を磁場強度の関数として測定したところ、磁化率の磁場強度依存性は磁気吸着量のそれと傾向が一致し、吸着水の磁化が磁気吸着に密接に関係していることがわかった。これらの磁化率の値を用いて熱力学式から実測値を再現するには、吸着相のなかにバルク相とは異なる磁気状態を仮定しなければならないことがわかってきた。吸着分子は吸着分子間および固体との相互作用を通じて磁気的性質を変え、磁場に応答するようにみえる。
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