研究概要 |
1.SO_2分子のC^1B_2状態における磁場消光を説明するため、ab initio法を用いた正確な電子状態の計算を行った。C^1B_2の平衡点から一方のS-O距離を伸ばしていった時のポテンシャル曲線を計算した。解離エネルギーは4.27eVとなり、これまでの計算値(約1eV)よりもかなり改良された結果(実験値は5.61eV)となった。問題のC^1B_2状態のポテンシャル曲線は右下がりの2^1B_2状態のポテンシャルと交差しており、この交差の山を越えることがゼロ磁場での前期解離に対応しており、この反応経路が磁場によって影響を受けることが磁場消光を引き起すと考えることもできる。しかしこの2つの状態間の結合項を計算してみたところ異常なほど小さい(<10cm^<-1>)ことがわかった。一方C^1B_2状態と三重項状態とのスピン一軌道相互作用は数十cm^<-1>と大きい値を示した。このこととつい最近の測定(磁場消光が大きい磁場(4 Tesla)で飽和する)から磁場消光が(1)これまで考慮外とされていた間接機構で説明できる、(2)統計モデルではなく、中間モデルに基づいた新しい無放射遷移の理論で説明できる可能性が生まれた。 2.時間に依存するシュレ-ディンガーの波動方程式に磁場の効果を取り込み、状態間の遷移確率を求めるための緊密結合方程式を得た。この方程式を、N^<5+>イオンによる水素原子からの電荷移行反応に適用して、次の結果(1)磁場を強くすると全断面積が増加する、(2)衝突エネルギーが低い程同じ強さの磁場であってもその影響は大きい、(3)縮退しているΠ,Δ状態の部分断面積が異なった値になる、を得た。更にこれまで計算できなかった極低エネルギー(数〜数10eVの運動エネルギー)に対し計算を行ったところ、低い磁場で新しい型の影響が現われることがわかった。
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