研究概要 |
有機反応において面選択を制御することは重要な課題である。本研究では、ジアゾメタンのアレン誘導体への1,3-双極子環化付加反応のπ面選択性を支配する因子を、遷移状態における結合間の相互作用を数値的に解析することによって明らかにし、面選択的反応の理論設計をした。主な成果は以下のとおりである。 (1)シン面攻撃を受けることが実験的に明らかにされているフルオロアレンの場合、シン攻撃を有利にする遷移状態での結合間相互作用は、(a)ジアゾメタンの炭素上の孤立電子対から、アレンへのπ^*軌道への電子非局在化、(b)ジアゾメタンの攻撃の方向とは反対側に位置するアレンのσ結合(シン攻撃ではC-H結合)から、アレンのπ^*軌道への分子内電子非局在化、(c)攻撃を受けるアレンのπ結合の分極である。 (2)以上3種の相互作用は、軌道レベルで見ると環式相互作用をしている。 (3)上記環式軌道相互作用は、軌道位相の連続条件を満している。 (4)環式軌道相互作用は、攻撃方向とは反対側のアレンのσ結合が電子供与性になればなるほど強くなる。 (5)実際、アレンのFを,Cl,Br,Iに替えていくとC-X結合はC-H結合より電子供与性が強くなり、塩素では殆んど面選択性は消失し、シュウ素、ヨウ素ではアンチ選択性になることが、ab initio分子軌道計算によって確認された。
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