本研究は一連のクラウンエーテル系化合物のプロトン親和力を非経験的分子軌道法を用いて算出し、実験値の間の食い違いに裁定を与えることを目的とした。本研究の結果は、Kebareleらの結果を支持する。また。プロトン化体では配位させられたプロトンをはさむことによって8員環的構造ができていることが分かった。このような部分構造はクラウンエーテル系化合物がプロトンのような小さなイオンを取り込む際の基本的構造であると考えられる。さらに、昨年度までの研究から第一遷移系列のモデルとして閉殻構造のカルシウムと亜鉛について反応機構を調べた結果、反応機構は会合的機構の中間に現れると考えられる七配位状態と解離的機構の中間に現れると考えられる五配位状態について各状態の反応ポテンシャル面上での性質を調べればよいことが分かってきたのでスカンジウムと銅の五配位状態と七配位状態について非経験的分子軌道法を用いて研究した。五配位状態はいずれも中間体として安定であるが七配位状態はスカンジウムでは中間体であるのに対し銅では四次の遷移状態になる。このため、スカンジウムでは会合的機構でも反応が進みうるのに対し銅では解離的機構でのみ反応が進みうると結論される。また、振動解析計算の結果は数値として出力されるので単純な分子以外ではどのような振動モードであるのかを直観的に知ることは困難である。本研究では振動解析計算の結果を視覚化する汎用プログラムを開発した。このプログラムではカ-テシアン座標とガウシアンシリーズの入力と出力を扱うことができる。
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