研究概要 |
環状高分子のエントロピーを絡み合い効果を厳密に考慮して数値的に求め、そのサイズ依存性を調べた。臨界現象の類推から近似式を提案した結果、サイズが十分大きくなくても良く適合することが分かった。さらに排除体積効果の影響を調べ、近似式中の「スケーリング」指数に普遍性が存在することを示した。 環状高分子の模型としてランダムポリゴンを考え、頂点数Nのポリゴンがある結び目Kになる確率P(K,N)(結び目生成確率)を数値実験で求める。現実の環状高分子では絡み合い効果により初期条件で与えられた結び目型が運動の中で保存されるが、統計的性質を調べるためにポリゴンのアンサンブルを用意すると必ず異なった結び目が含まれてしまう。我々は結び目不変量を用いて結び目ごとにアンサンブルを分割し、絡み合い効果を評価する。絡み合い効果によるエントロピーは結び目生成確率から直接計算できる。本研究では排除体積効果も考え、ランダムポリゴン模型として半径Rのビーズが連なった棒ビーズ模型(Rod bead model)を用い、サイズNを30〜2000、半径Rを0〜0.3の範囲で変えて結び目生成確率の実験値を求めた。結果は近似式P(K,N)=C(K)N∧m(K)exp(-N/N(K))に良く適合した。ここでC(K)、m(K)、N(K)は適合変数で、m(K)はスケーリング的振舞いを、N(K)は指数関数的な減衰を表す。この近似式は本来はサイズが十分大きい場合にのみ正しいが、結果的にはサイズが小さい場合でも良く適合した。興味深いことに、指数m(K)はビーズ半径Rの値を変えても結び目型ごとにほぼ一定値であること、つまり、ランダムポリゴンの模型によらず普遍的な値を示すことが分かった。以上の結果は重要で、絡み合いのある様々な高分子系のエントロピーを組織的に研究する上で非常に役立つであろう。
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