研究概要 |
概均質ベクトル空間とは,有限次元ベクトル空間に線形代数群が作用し,かつそのときopenなorbitがdenseになるベクトル空間である.この基礎的な概念の研究に関して,次のような結果が得られた. 1.概均質ベクトル空間の基本的な性質を調べるためには,まずそれらを分類し,orbitsに分解する作業が必要である.複素数体上では,すでにかなりできていたが,本年度は特に実数体上での計算にいくつか進歩があった. 2.相対不変式の複素べきの満たす線形偏微分方程式系(holonomic系)のsupportを決定し,特にそれらの間の交わりの様子を調べることが大切である.これも複素数体上ではかなりできていたが,実数体上での計算をいくつか終了した. 3.実領域における相対不変式の複素べきはhyperfunctionになる.これは,概均質ベクトル空間のゼータ関数のlocal版の一つで,その超局所的な性質を調べるためには,その超関数の満たすholonomic系のsupportを決定する必要がある.これも複素数体上ではかなりできていたが,実数体上でいくつか計算をすることができた. 4.概均質ベクトル空間上の(相対)不変な超関数の研究は,前記のholonomic系の研究の延長線上にあるものであるが,特にsupportが余次元1以上のものを特異不変超関数と呼ぶ.特に代表的な概均質ベクトル空間であるn×nの実対称行列の空間や複素Hermite行列の空間などにおける特異不変超関数を決定することができた.
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