研究の主要課題は2次元量子可積分系の『代数的』構造を明らかにすることにある。特に、今年度は量子群の典型的な例であるYangian代数を対称代数に持つ量子可積分系の研究を行った。 第一にYangian対称性を持つmassive S行列理論の構造を解析した。Yangian代数によるPoincare代数の非自明な拡張を通じて相対論的粒子がしたがうYangian表現を与えた。さらにこのYangian表現をDrinfel'd多項式で記述することにより、S行列の散乱角とYangianの表現のtensor積の構造との関係を明確に与えた。これらの定式化により以下の事実を明らかにした。 1.局所的保存量の選択則。Yangian対称性と可換な局所的保存量のスピンの値はbaseとなる単純リー代数のCoxeter数を法としてその指数で与えられる。 2.保存量の電荷公式。保存量のスピンが選択則を満たす場合に、その保存量に対する各粒子の電荷を与えた。特別な場合としてOgievetsky-Reshetikhin-Wiegmanの質量公式を再現した。 3.散乱角間の三角関係式。3粒子の散乱角の間に成立する簡単な関係式を導いた。 第二にYangian対称性を持つスピン自由度のあるCalogero-Sutherland型量子系の構造を解析した(土屋氏、大島氏(名大)との共同研究)。Hilbert空間のdegenerate affine Hecke代数による既約分解の様子を調べることにより、Hilbert空間上におけるYangian代数と保存量代数との間にSchur-Weyl型の双対性が成立することを明らかにした。さらにvertex模型のpath空間との間の対応を明らかにし、su(2)level1のWZW模型の新しい指標公式を導いた。
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