本研究の目的は、一般的な量子群に対応する一次元スピン鎖模型を表現論を用いて解析することであった。実際の研究には、B型とD型の量子アフィン代数に対応する一次元スピン鎖模型を選んだ。この模型のあるパラメータ領域に関して次のような成果が得られた。 1.物理量を計算するもととなる頂点作用素の二点関数を求めた。この際、次数の高い量子アフィン代数の表現を具体的に書き下す必要が生じたが、それも融合法と呼ばれる手法で解決した。 2.ハミルトニアンの状態空間を量子アフィン代数のある表現と同一視した。この数学的な同一視が物理的描写とも合っていることを確認した。 3.生成・消滅作用素を頂点作用素で表示し、その励起エネルギーを計算した。 4.3で得られた励起エネルギーのある極限をとると、因子分解可能な散乱行列の理論計算される粒子の質量が得られると考えられている。この質量を実際に計算し、対応する散乱行為の理論から得られるものと一致することを確認した。 この成果に関しては、オーストラリア国立大学数理学部のデイヴィス教授と共同で論文をほぼ書き終えており、近く投稿予定である。また、D型の量子アフィン代数には上述のものとは異なる表現に付随した一次元スピン鎖模型もあるが、この場合の解析にも既に着手している。
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