研究概要 |
霧島の構造を総合的に研究するために地震による構造調査,電磁気学的手法による構造調査を行った. 人工地震構造調査:12月1日未明に霧島を北西-南東に縦断する4点および東側の2点,計6点で爆破を行い,163点において一部3成分を含む上下動成分の観測を行うとともに,えびの高原において広密度観測及び高帯域観測を行った.爆破により得られた記録は,ほぼ全点において良好である.これらの記録は,これから1年程度をめどに初動や主要な反射相から速度構造の基本的な枠組みを明らかにするが,暫定的な解析結果では,2km/secの表層が1km程度の厚さあり,その下には,5km/secの基盤が見られる.この深さは,南側で浅くなる. 電磁気構造調査:1993年9月から霧島火山群・加久藤カルデラを囲む地域においてネットワークMTを断続している他,1994年9月にVLF,ELF,ULF-MT調査を新燃岳,中岳,御鉢,御池などの火山周辺および霧島火山群の東部において実施した.VLF,ELF,ULF-MTでは,厚さ100〜300mの高比抵抗(数100Ω・m)の表層の下にある数Ω・mの低比低抗層が硫黄山周辺,および新燃岳の南西から大幡池を経て高原に抜ける一帯に広がっているのに対して御鉢,高千穂峰などの南東部の火山周辺では,数Ω・mの抵比抵抗層は,御鉢の火口内の狭い領域に限られ,周囲では数10Ω・mとやや高い層となっていることが明らかとなった.この事は,火山体下の帯水層へのマグマからの揮発性物質の発散が硫黄山,新燃岳,大幡池などで活発であるのに対して,御鉢ではそれがあまり活発でない事を示していると考えられる.硫黄山,新燃岳などの北西側に位置する火山では,この浅部の低比低抗層の下に数10Ω・mのやや比低抗の高い層をはさみ,その下に1〜10Ω・mの低比低抗層が10km程度の深さに広く分布している事,御鉢の周辺ではそのような低比低抗層が欠落している可能性がある事が明らかとなりつつある.ネットワークMTでは,霧島火山群・加久藤カルデラ全体を視野においた広域の構造を明らかにする事を目的として解析を進めているが,現段階では,霧島の火山下部が周辺地域に比べて低比低抗域である事が明らかとなっている.
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