研究概要 |
本研究では,上部マントルカンラン岩の中のマグマチャネル復元の試みた.その結果,上部マントルカンラン岩中のマグマチャネルの解析が島弧マグマの供給システムの解明や上部マントル内部での初生マグマの分離・移動・集積・組成改変などの火成プロセスの理解にとって極めて重要であることがわかった. (1)日高変成帯幌満カンラン岩体・ペンケヌ-シカンラン岩体のマグマチャネルの産状観察を行なった.とくに,ダナイトなどの高Mg#カンラン岩や輝岩・ハンレイ岩などのチャネル岩石の産出形態・内部構造および壁岩との関係を重視して観察し,岩石試料を系統的に採取した. (2)チャネル構成岩石の岩石記載にもとづき,主要構成鉱物のEPMA分析を行なった.とくにカンラン石・スピネル・斜方輝石・単斜輝石・パ-ガサイト質角閃石の化学組成の3次元空間変化を明らかにした. (3)以上の資料から,チャネルの形態と構造,チャネル形成に関与したマグマの性質,マグマ-カンラン岩壁岩反応について検討した.復元されたマグマチャネルは次のモデルケースにまとめられる.1つは通過マグマの温度がカンラン岩壁岩のソリダスより低い場合で,チャネル周辺の壁岩は部分融解せず,通過マグマのメルト成分の注入付加によって改変される(幌満スピネルダナイト中の輝岩岩脈:周辺に置換性ハルツバ-ジャイトバンドを形成).もう1つは通過マグマの温度がカンラン岩壁岩のソリダスに近いかより高い場合で,チャネル周辺のカンラン岩は部分融解し,融解メルトはチャネル中心に向かってイクストラクトする(幌満斜長石レルゾライト中のガブロタイプGBI:周辺に涸渇カンラン岩の形成).後者の場合,通過マグマのチャネリング様式としてカンラン岩中の開いた割れ目をメルトが移動する岩脈タイプとカンラン岩の結晶粒間(隙間)をメルトが移動するポーラス流タイプの2つが識別された.
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